期間限定特別企画(2000年12月4日〜12月31日)

映画の21世紀

The 21st Century in the Movies


 

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 アトムのいない韓国映画

 Korean Films Have No Astroboy

 まるは子

 by Maruhako

 

 第1章 韓国映画は未来を描けるか?

 描けない…これで終わりにできればどんなにか楽なことだろう。しかし、そうもいかないので、これから「韓国映画がなぜ未来を描けなかったか?」について考察してみようと思う。

 その前に考えてみよう。我々は未来を描くことを当たり前だと思っているようであるが、果たしてそうだろうか? 韓国のみならず、対象をアジア全体に広げてみても、どうも未来を描いた映画というのは思いあたらない。

 「近未来」というのはある。例えば、台湾・蔡明亮の『Hole』(洞)。2000年を迎えようとしている時に恐ろしい伝染病が発生し、主人公の男女が恐怖におびえる話だ。私はこれを2年前に台北で観た。蔡明亮お得意の閉塞感と、それを「突き抜けた」と思える演出を見せてくれて興味深く思ったものだ。ただこれはやはり「世紀末」を描いたものであろう。21世紀を描いたとは言いづらいのではないか。

 また、韓国の『シュリ』にしても近未来を描いていると言えなくはないが、やはり「21世紀を描いた韓国映画」とは違うだろう。

 ひょっとしたら、未来という概念はアジア人にとって苦手なものかもしれない。中国はどうだろうか? 孫悟空がいるではないか。 いや、『西遊記』は未来譚ではなく異域譚だ。『山海経』にしてもそうだが、中国人の想像力は、空間軸には強いのだが、時間軸はたやすく移動はできないようだ。その証拠に、未来小説などというものは、ごく最近を除いては、星の数ほど小説が発表された清末時期にわずかに散見されるだけだ。

 韓国では今年に入って時間軸を移動する映画が出現した。日本公開はまだ決まってないようだが、『同感』と『時越愛』である。前者は現在と二十年前が無線機によって結び付けられ、後者は現在と二年前が手紙(ポスト)によって行き来する。どちらもなかなかの秀作であり、韓国の観客にも支持された。 ただ、ここで注目したいのは、両者とも過去との対話である点だ。『タイムトラベラー』や『ドラえもん』が現在と未来の交流であるのを思い出してほしい。

 なぜ、韓国映画(アジア映画)は未来を描けなかったか? 私は3つの壁を想定してみた。(1)政治の壁、(2)技術の壁、(3)文化の壁である。 分断国家においては未来を語ることに困難が伴う。また、ハリウッドのように湯水の如く金を使って大作を撮るのも夢のような話だった。加えて、文化的下地がなかったとしたら、未来を描けなかったのも無理はない。

 

 第2章 アトムの子どもたち

 さて、我々が未来を頭に描く時、まず思い浮かべるのは「鉄腕アトム」ではないだろうか。2003年4月が彼の誕生日だ。やがて来るこの時を40年前に恐るべき想像力で描き出したのが手塚治虫である。 アトムは我々の(と言うには若い読者もいるかもしれないが…)血となり肉となっている。彼のおかげで日本人は未来を身近なものとして感じることができたと言っても過言ではないだろう。そう、我々は「アトムの子ども」なのだ。 アニメーションという方法も未来を描くのに適している。実写では相当の技術力・資金力がないとまともな映画にはならないからだ。 手塚治虫の直系とも言える藤子不二雄もこの方法でその下の世代を虜にした。 そして、文字通り「アトムの子ども」である手塚眞が描いた『白痴』を観て私はしびれた。坂口安吾の世界を忠実に描きつつ、彼の想像力は時空を越えて羽ばたいた。カメラが高層ビルを俯瞰しながら移動する時、私は思わず「アトムだ」と心の中で叫んだ。

 

 第3章 映像新時代を迎えて

 実は、館主さんから依頼を受けた時、思い浮かんだ映像がある。『KUMIHO/千年愛』の冒頭の地獄の地下鉄のシーンがそれだ。改めて見直してみると、それは決して未来を感じさせるものではなかったのだが、最初に観た時のインパクトは強かった。妙にモダンに見えたことを今も憶えている。 実際、この作品は、『銀杏の木のベッド』(『シュリ』のカン・ジェギュ監督の第1回監督作)『ソウル・ガーディアンズ』などのSFXモノの先駆けとして重要な意味を持つ作品とされている。

 韓国では、国家的産業として映画に巨額の資金が投じられるようになった。『シュリ』は特異な例だとしても、投資しただけ回収できる下地が韓国映画に出来るようになった。また、ソウルの郊外に立派な撮影所が出来て、これまでは困難であった大がかりな撮影も容易になった。潜水艦映画『ユリョン』の特撮風景がNHKの特集で報じられていたのを憶えている人もいるだろう。私は『ユリョン』はVCDで観ただけなのだが、それでも迫力に圧倒された。 このように、近年とみに映画撮影をめぐる状況が好転している。さらに南北の緊張が一気に緩んだ今こそ未来を描く映画が作られるべきではないだろうか。

 

 第4章 未来を描く韓国映画たち

 「韓国映画は未来を描けなかった」と書いた。しかし、これは事実ではない。21世紀のことを描いた映画は存在する。今年作られた『平和の時代』という宇宙サッカー映画(?)が韓国で公開されているのだ。日本でも一度だけ上映されたので、観ている人もいるかもしれない。 ただ、これはアイドルグループ H.O.T のプロモーションビデオ的性格が強く、映画評論家たちはほとんど相手にしてないようだ。私も話の種にソウルで観ようとしたのだが、早々と打ち切りになって観ることができなかった。ひょっとしたら意外な傑作だったのかもしれないが、実際に観てないのでここでは論じないことにした。2200年のことなので、「21世紀を描いた韓国映画」としては最適だったのだが…。

 韓国を代表する俳優と言えば、今では誰もがハン・ソッキュの名前を挙げるだろう。彼が出演する映画は必ずヒットするとまで言われている。その彼が、『シュリ』以来の沈黙を破って出演作に決めたのが『ジェノサイド』というSF映画だ。これが発表された時の韓国映画界の衝撃は想像に難くない。 そのほかにも複数のSF映画が企画中だと聞く。大いに注目したいところだ。

 ただし、私は楽観はしていない。韓国版ゴジラとも言える(舞台は韓国ではないのだが…)『ヤンガリー』にしても、年代不明の部族の対立を描いた『燃ゆる月』にしても、興行的に大きくはこけなかったが、作品の出来は不満の残るものであった。世界的市場を視野に入れて作ろうとするとどうも失敗するようだ。

 国外の市場に目を向けて娯楽大作を作ろうとする時、無国籍化・普遍化の方向に走ることは予想できる。それでいてリアリズムを失わない作品が出来るだろうか? 『ジェノサイド』など、これから作られる「未来を描く映画」がハリウッドをあっと言わせるような作品に仕上がることを期待してやまない。

 

 

●まるは子

韓国映画を中心にアジア映画全般にわたって強いまるは子さんには、またまたお忙しいところご協力いただきました。そうそう、まるは子さんもまた、福岡市在住の方です。

 


 "2001: a Space Odyssey"

 "The Hole" 

 "Blade Runner" - English Version

 "Metropolis"

 "The Terminator"

 "12 Monkeys"

 "Event Horizon"

 "Peut-Etre"

 "Gattaca"

 

 

 

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