#01 

 「極限探偵」シリーズ

 (2014/07/14)

 

 「影なきリベンジャー/極限探偵C+」

  C+偵探 (The Detective)

 「冷血のレクイエム/極限探偵B+」

  B+偵探 (The Detective 2)

 「コンスピレーター謀略/極限探偵A+」

  同謀 (Conspirators)




 パン・ブラザースと来れば、ちょっと前までアジア映画のファンにはピンと来る名前だった。
 タヴィアーニ兄弟、ウォシャウスキー兄弟、そしてキャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(2014)で一気に躍り出たアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟…と、今でこそ兄弟監督は珍しくも何ともなくなったが、当時は何だかんだ言ってまだ珍しかった気がする。
 その「登場」は、僕が記憶している限りでは、2000年に開催された第14回東京国際映画祭だったと思う。彼らの作品「レイン」(2000)が、タイ映画として出品されたのだ。僕は残念ながら「レイン」を見ていなかったが、かなり評判が高かったことは覚えている。ちょうどこれと前後してタイ映画がいろいろ日本に紹介されていたこともあって、タイのニューウェーブの一環として受け止められていたような気もする。
 ついで紹介されたのが、ホラー映画のアイ(2002)。「レイン」が評判高かったことは聞いていたが、あちらはハードボイルドだったはずだから、今度はホラー…とその芸域の広さにビックリ。これは日本でも結構当たって、一気にパン・ブラザースの名が映画ファンに知れ渡ったと思う。
 パン・ブラザース…兄のオキサイドと弟ダニーの 兄弟。「レイン」がタイ映画で「アイ」にも後半タイが出てくるからタイの人かと思っていたが、実は香港出身。それがなぜタイ映画界からデビューしたのか理 由は分からない。ただ、当時イケイケだったタイのニューウェーブとうまくリンクしたのか、一気にアジアの成長株にのし上がったのは確かだ。
 ヒロインのアンジェリカ・リーが可愛らしかったこともあるし、音響効果をうまく使ったショック演出もなかなか。何よりちょっと泣かせる話にしているのが、日本人の心の琴線に触れた。ただし評判が良かったのは日本だけではない。あまりに好評だったため、トム・クルーズによってハリウッド・リメイク権が買い取られるまでになった。
 まぁもっとも、この当時はやたらとトム・クルーズとスピルバーグによる「ハリウッド・リメイク権獲得!」が売りの映画が多かった。というか、こいつらがやたらに世界の目立つ映画を買いまくったとでもいうべきか(笑)。スピルバーグはフランス映画の奇人たちの晩餐会(1998)、韓国映画の箪笥(2003)…、トム・クルーズはスペインのオープン・ユア・アイズ(1997)、イギリスのロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ(1998)、 そしてこの「アイ」…などなど。映画館で配られるチラシなどにも、デカデカと「スピルバーグ映画化!」などとうたわれていたものだった。実際にはほとんど がリメイクが制作されても成功しなかったし、いまだにリメイクそのものが制作されていないモノもある。そもそも元から英語映画の「ロック、ストック〜」を ハリウッド・リメイクして、一体どうするつもりだったのかねぇ?
 そんな中、実現した「アイ」のハリウッド・リメイク「アイズ」(2008)は、何を血迷ったかへそピアスも入れてるビッチ臭ムンムンのジェシカ・アルバ主演。これだけ見ても、すでにダメだったんじゃないの?
 まぁ、それはともかく、パン・ブラザースはこの時点で世界的な注目を集めるようになったわけだ。
 それが証拠に、兄のオキサイドはその後単独でテッセラクト(2003)を監督。舞台はタイだが、ジョナサン・リース・マイヤーズ主演でイギリス・タイ・日本資本による国際的な作品だ。映画の出来はといえば、いろいろな話が錯綜していく野心作。正直言って成功作とは思えなかったが、そういう海外資本の映画を撮るようになるほど、彼らの名声は国際的になっていたんだろう。
 ただその一方で、「アイ」で始まったホラー志向によって、彼らはあまり思わしくない方向に進み始めていもいた。その兆しみたいなモノを初めて感じたのが、2003年の第16回東京国際映画祭で見たタイ映画オーメン(2003) でのこと。実は僕はこの作品、パンブラが噛んでいるとは思っていなかった。実際には脚本・制作のみの関与ということだったみたいだが、出来映えは今ひと つ。何でも向こうのジャニーズみたいなアイドル売り出し映画だったみたいで、少々お寒い出来映えだった。実際、本人たちも気乗りしないで作ったようだが、 それにしたってあまりに作りが雑。妙に音響効果に頼ったホラー演出も気になった。まぁ、そもそもホラー映画で「オーメン」ってタイトルつけるセンス自体、 すでにアレだろう(笑)。
 そんなイヤな予感は、どうやら現実のモノだったらしい。次いで日本に到着したアブノーマル・ビューティ(2004)は、兄のオキサイド監督、パンブラで製作という変則スタイルのパンブラ作品だが、またしてもホラー。またしても向こうで人気らしいアイドル姉妹デュオ「R2」主 演による作品なのだ。出来上がりも行き当たりばったりな話で今ひとつ。アイドル映画としてはヒロインたちの可愛さで売ったりしていない(それどころか、風 呂場でのオナニー場面などがある!)から「これでアイドル映画になるのか?」と心配になる異色さではあるが、雑な作りにこういう映画ばっかり作って大丈夫 なのかと心配になってしまう。
 おまけにあの大成功作「アイ」を「the EYE 2」(2004)、「the EYE 3」(2005)とシリーズ化するという無謀ぶり。どう考えても「シリーズ化」できるような話じゃないが、おそらくはスティーブン・セガールの「沈黙」シリーズ並み(笑)のタイトルのみのシリーズなんだろう。さすがにここまで来ると僕も付き合いきれないんで見ていない。
 そんなこんなで日本ではそろそろパンブラの賞味期限が切れ始めてきたが、その頃になってパンブラはようやくハリウッド上陸を達成した。彼らのハリウッド上陸第1弾は、またまたホラー作品ゴーストハウス(2007)。
 主演が「トワイライト」でおなじみ顔色が悪くて目の下クマのクリステン・スチュワートっ てあたりがハマりすぎ(笑)。相変わらず音でガチョ〜ンとコケ脅しのホラー演出をやっているのは気になったが、今回もちょっと泣ける要素を盛り込んだとこ ろが「パンブラ風味」。久々にちょっと持ち直した気がした。しかしその一方で、「ハリウッド上陸第1作」の割に地味でパッとしない感じが漂っているのも気 になった。
 この時期はパンブラにとって、「ハリウッド遠征」時代というべきなんだろうか。例のジェシカ・アルバ版「アイズ」が公開され、ニコラス・ケイジ主演で「レイン」をセルフ・リメイクしたバンコック・デンジャラス(2008)も作られた。「バンコック〜」はパンブラにとって2作目のハリウッド映画。トンデモ映画もニコラス・ケイジも好きな僕は楽しんだが、イイとこもあるんだけど正直かなりヘンテコな映画だったと言わなくてはなるまい。
 そんなわけで「レイン」「アイ」の大成功から10年ぐらいでハリウッド到達を果たしたんだから「ご立派」と言いたいところだが、ずっと追いかけて来た側からすれば「ジリ貧」な感じが否めないパンブラ。ところが彼らの作品には、劇場未公開、ビデオスルー作品がやたら多いらしい。どうせホラーばっかりだろうと敬遠していたのが正直なところだったのだが、知らないうちにこんな路線にも手を出していたんだねぇ。
 「極限探偵」シリーズ。
 僕はこんな作品の存在を知らなかったが、このたび「初夏のパン祭り」(笑)と題して六本木の映画館で彼らの作品の連続公開が行われた。そこで公開された4本のうちの3本が、この「極限探偵シリーズ」なのだ。

 タイトルも変わっていて、元々の原題タイトルからついている、1作目が「C+」、2作目が「B+」…っていう文言は一体どんな意 味があるのだろうか。僕が無知なせいかちょっと思い当たらない。意外とあまりに簡単な意味で、オレがアホをさらしているだけかも分からんけど(笑)。

 僕は香港映画ファンでも何でもないので知ったかぶりをするつもりもないが、歌手兼俳優のアーロン・クォックが主役を務めるこのシリーズ。パンブラがミステリーを手がけるなんて、ちょっと興味深いじゃないか。最近はバカの一つ覚えのホラーばっかりですっかり食傷気味だったから、かなり新鮮な気がした。
 そんなわけで僕は、この連続公開に付き合ってシリーズ三部作全部を見てしまった。ヤマザキのパン祭りと違ってオマケの皿はもらえなかったが(笑)、久々のパンブラ作品を張り切って紹介したい。


「影なきリベンジャー/極限探偵C+」

 バンコックの中華街。毎朝、裏町でおかしな浮浪者が奇声をあげる頃、薄汚れたオンボロ事務所の「開店」準備を始める私立探偵のタム(アーロン・クォック)。そんな彼の事務所を訪れたのは、旧知の飲み仲間ロン(シン・フィオン)だ。
 ロンはヤケに怯えた口調で「命を狙われている」と告げ、自分を殺そうとしている人物の写真を差し出した。それは、長い黒髪の美女の写真だ。その女を探し てくれとの頼みだが、その女がどこの誰かは分からないと言うし、何で写真を持っているのかも明かさない。酔っぱらいのタワゴトと追い出そうとするタムだ が、ロンがドンと札束を出してきたから態度は一変。とりあえずお約束で、「依頼人」ロンの写真をデジカメでパチリとやったところが、彼はタムの目の前でい きなり口から泡を吹き出すではないか。だから昼間っから飲んでる酔っぱらいはイヤだと…。
 そんなタムには、古くからの知り合いがいる。それは地元の警察に勤める警官のチャック(リウ・カイチー)だ。タムが子どもの頃から見ていて、探偵仕事を やっていく中で何かと頼み込んだりする仲。今日も食堂でアレコレ二人で話し込んでいた。何だかんだとお小言も多いが、すべてはタムを心配してのこと。
 さて、例の写真を持参して、街のあちこちで聞き込みを始めるタム。すると、とある雀荘で初めて手応えがあった。雀荘の主人チャン(ラウ・シウミン)が、 写真の美女がかつての常連客サム(ナッタターシーニー・ピナヨーピヤラウィー)だというのだ。そのサムはミン(チャイアポン・セッタカム)とよくこの雀荘 に来ていたということだが、最近は二人ともパッタリ姿を見せないという。
 早速、タムは教えてもらったサムの住所に足を運んだ。しかし、問題のマンションの一室は生憎と留守。近所の人に聞いても、長らくどこかに行ったままらし い。仕方なくサムの部屋の前でボンヤリしていたタムの前に、先ほど雀荘にいた若いオカマちゃんが近寄ってくる。このオカマちゃんがタムに、サムが親しくし ていたミンという男の住所を教えてくれるというのだ。
 こうして、ミンが住んでいるというマンションの階段を上がっていくタムは、いきなり階段を駆け下りて来たヤセ男に突き飛ばされる。ムッとしながらもミン の部屋へとたどり着くタムは、例によって例のごとく自慢のデジカメでパチリ。するとミンの部屋の扉が、ゆっくりと開き始めるではないか。もちろんタムは、 誘い込まれるように扉の奥へ。すると彼の目の前には、天井から男の死体がダラリとぶら下がっているではないか!
 タムの通報によってたちまち警察が急行。やって来たのは、顔なじみのチャックだ。チャックはタムがまたまた厄介事に首を突っ込んだことに渋い顔だが、そ れでもタムがねだれば証拠品を見せてくれたりする。タムはドサクサに紛れて、死んだミンの携帯電話を見せてもらった。すすとミンはかなりの女ったらしだっ たらしく、例のサムという女だけでなくさまざまな女とのツーショット写メが入っていた。それらを目ざとく見つけたタムは、チャッカリ写メを自分の携帯に移 しておくのだった。
 そして例のミンという男、あっちこっちの女に手を出しておきながら、ちゃんと家庭を持っていたというから呆れる。さらに新情報として、株で大損こいてカネに困っていたという話もある。さては、これは女がらみか、はたまたカネがらみの犯罪か…。
 しかしチャックは、何でもかんでも犯罪にしたがるタムを叱責。ミンの死因は間違いなく首つり自殺で、事件性は皆無だという。タムは自分にぶつかってきたヤセた男がクサいと思っていたが、そもそもミンの死体は死後何日も経っている。その男が殺したはずもないのだ。
 そんなこんなで、タムはミンの妻(エル・チョイ)のもとへ。もちろん探偵なんて名乗って入れてもらえる訳もないから、チャッカリ刑事と自称してズカズカ 入っていく。しかしミンの女房は、夫の困窮ぶりを知らなかった。それどころか、最近大金を持っていたと証言する。これは一体どうしたことか。
 ところがマズイことに、そこに警察のチャックが取り調べにやって来るからついてない。案の定、タムはチャックからサンザン絞られることになる。
 しかしタムの耳には、チャックの小言が聞こえていない。彼らの目の前に停まっているクルマが、タムの注意を引いたのだ。そのクルマの運転席の男…あのミンのマンションでぶつかってきたヤセ男ではないか! オレを見張っているのか?
 しかしタムに気づかれたことを悟ったヤセ男は、慌ててクルマをスタートさせた。タムは通りのクルマを「警察だ!」と言って停め、ドライバーを下ろしてクルマを「借りて」しまう。
 こうして行きがかり上チャックも助手席に乗せて、バンコックの路上で激しいカーチェイスが始まった…。


 映画が始まって、バンコックの中華街でしがない探偵稼業を営む主人公の朝の店開きの様子が描かれる。そこでラジオから流れる音楽として聞こえてくるのが、「ME PANDA」と題する軽快かつ脱力系の曲。タイ語のヒップホップと でもいうべきだろうか、ただし「あの」タイ語だから、英語の「それ」みたいに攻撃的にもパワフルにも聞こえない。ただただ脱力気味でのどかながら、どこか 人をナメたようにしか聞こえない(笑)。どっちかというとヒップホップというより吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」みたいな感じ…とはいえ、吉幾三のあの曲は あの曲でスパイス・ガールズの「ワナビー」そっくりと言えなくもないのだが(笑)…。それはともかく、これがダサいのに妙に味わい深くて、忘れがたい曲な のだ。ワレサ/連帯の男(2013)感想文でもちょっと触れたが、あのジョニー・トーの傑作ザ・ミッション/非情の掟(1999)のテーマ曲みたいに、後を引く「ダサ面白い」曲なのである。

 この軽妙かつ力が抜けてくる曲をバックに流しながら、われらが主人公、アーロン・クォック演じる「極限探偵」ことタムが、小汚い事務所で「開店準備」を始める。それはちょうど、昔のテレビドラマ「傷だらけの天使」(1974〜1975)でショーケンこと萩原健一が、井上尭之バンドの軽快な曲に乗せて朝飯にかぶりつくオープニングに似ている。そういや井上バンドの音楽も、ちょっとトボけた脱力系の曲だ。
 そしてこのどこかスットボケた曲のイメージが、今回の主役タムのキャラクターを決定づけた。実はそれは本作だけでなく、最終的には三部作全体に及ぶ影響 を与えている観さえあるのだが、それはまた別の話。ともかく、冒頭に流れるこの曲が何とも秀逸だということは、まず言っておかねばなるまい。
 そう、この曲が何とも秀逸であるように、この作品の主人公タム探偵と、彼を演じるアーロン・クォックが何とも味わい深いのだ。
 いかにもなアンチャン風の、縁日のテキ屋が着てそうな安手のポロシャツ。スポーツ刈りの頭で目がグリグリ。スットボケた態度でチャッカリ警察を出し抜い たり勝手に捜査したり、不敵で不貞不貞しいくせにちょっとビビったり、愛嬌たっぷりなキャラクターが忘れがたい。正直言って綿密に考え抜いての行動とは思 えないが、頭より先に身体が動いてしまうあたり男の「可愛げ」に溢れている。何とも愛すべき私立探偵なのだ。
 僕は昔から私立探偵モノが大好きで、私立探偵というと頭に浮かんで来るのがポール・ニューマン演じるルー・ハーパー探偵が活躍する「動く標的」(1966)。今回のタム探偵はそれに匹敵すると言ったら言いすぎだろうが、大いに気に入ったのは間違いない。それが証拠に、僕はこの後三部作全部を見るために映画館に通ったのだから、やっぱりかなり魅力的だったんだろう。
 アーロン・クォックという役者のことをまったく知らないので偉そうなことを言えないのだが、少なくともこの映画においては彼は非常に魅力的な役者だ。昔の若い頃の黒沢年男三橋達也を 足して二で割って脂っこくしたような感じといえばお分かりいただけるだろうか。脂っこくしても男性路線でも、根底にどこかかつての東宝スターが漂うという ことからして、おそらく品の良さが隠せないのだろう。どこか少年っぽいところもある。それは本作で生い立ちに関わるエピソードが出てくるあたりで、十分に 活かされているのだ。
 ここで紹介しているストーリーには出てきていないが、実は主人公には少年時代に受けた深いトラウマがある。彼の両親は突然彼を置いて失踪しまい、現在も見つかっていないのだ。彼はそんな両親を見つけようと、探偵になったのである。
 その失踪事件の捜査に関わったことから、ずっと親代わりに彼を面倒見てきたらしい警官のチャックもイイ味を出している。チャックがタムと交わすユーモラスなやりとりといい、あの「アイ」を泣かせるホラーにしたパン・ブラザーズらしい心優しい味わいなのである。
 そしてタムが捜査で行く先々でゴロゴロ転がる死体やら事件の成り行きやらが、どことなくおどろおどろホラー風味で描かれているあたりも、ホラー大好きなパン・ブラザーズらしいところだろう。パンブラゆかりのタイを舞台にしたことによるジメついた気色悪さと相まって、何とも鬱陶しい怖さを醸し出している。ここも見どころのひとつだ。
 もっともパン・ブラザーズらしい…と言っても、本作は本来の意味でのパン・ブラザーズ作品とは言えないかもしれない。本作の監督は兄のオキサイド・パン単独で、プロデュースがオキサイドと弟ダニーとの共同という形をとっているからだ。広義の意味でのパン・ブラザーズ作品というところだろう。











ここからは映画を見てから!













 そんな本作、終盤にはいきなりパン・ブラザーズらしさが全開の展開になる。何とここまで主人公タムの行く先々で「犯人たち」を翻弄し、なおかつ主人公を真相へと導いていったのが、無念の思いで殺された女の「幽霊」ではないか?…と思わせる結論になっているからである。
 それだけではない。主人公が最後に「犯人」とともに導かれて行った地下のゴミ処理場で、それまで行方不明だった主人公の両親の遺体が発見されるのだ。これはあの「幽霊」が、真相を調べてくれた主人公に対するお礼として、教えてくれたことではなかったのか?
 そこまでは異色のハードボイルド・ミステリーだった本作、本来ならそこに「幽霊」が出てきちゃいかんだろう…と言いたいところ。実際、理詰めなミステ リーに超自然的なモノを出しては反則なのだが、本作はそこまで緻密な「推理」モノというほどでもない。それに、そこは「泣かせるホラー」が持ち味のパンブ ラなので、大目に見てしまう。いろいろな意味で余韻の残るミステリー映画なのだ。
 この時点で主人公の両親のことなど、謎が残ったまま。これは最初から続編を制作する構想があったのだろうか。ともかく得意なホラー風味も織り込んでの異 色の探偵ミステリーとして仕上がった本作、パン・ブラザーズ映画のもうひとつの魅力として大いに楽しめた。向こうのファンも同意見だったのだろうか、公開 された2010年当時アジア全域でかなりの大ヒットとなったらしい。まずはめでたい。

 

「冷血のレクイエム/極限探偵B+」

 それは一昔前、中学校の父兄参観日でのこと。
 この日も両親のいない彼(ワン・ズィーイー)の母親代わりに、お姉さん(チーウィー・ラム)が来てくれた。彼の両親は、夫の浮気が原因で自殺した。たっ た一人遺された彼を救ったのが、隣の家のお姉さんだったのだ。それ以来、彼はお姉さんを母親代わりに慕って暮らしている…。
 現代のバンコック。あるアパートで、一人の男の惨殺死体が発見される。あまりに惨い殺しっぷりに警官たちも辟易。そのアパートから、一枚の手紙のような モノが発見される。その内容はというと、浮気した夫を殺した…とかこの殺しと関係あるのかないのか分からないようなものだ。
 一方、例の汚い事務所で客を相手に商談真っ最中の私立探偵のタム(アーロン・クォック)。彼は前作の事件解決で大いに名を挙げており、最近羽振りもすこぶる良くなった。
 それはタムと一緒に事件を解決した、警官のチャック(リウ・カイチー)にとっても同じこと。現にこれによって「出世街道」に乗り、やり手のロー部長(パ トリック・タム)の下に異動になっていた。しかし、ひとクセあるロー部長の下では気苦労も耐えない。そこでチャックは気心の知れたタムに協力させて、難航 している事件を解決させようと考える。むろんタムも、お世話になっているチャックに協力するのは何の異存もない。
 そんな彼らを待ち構えていたように、新たな事件が起きる。深夜、自宅に帰ってきた女が、その自宅前で何者かに惨殺されたのだ。殺されたのは、娼婦のメイ ファン。身体には性的暴行の痕跡もあった。さらに、高利貸しのチュンという男も自宅で殺されたため、早速、タムは現場に駆けつけた。
 しかし現場検証中のロー部長に目を付けられ、イヤミと暴言を吐かれる。それまではロー部長のモラハラにじっと我慢のチャックだったが、さすがに長い付き 合いのタムにまでイヤミを言われたら黙ってはいられない。ついにキレたチャックは、上司であるロー部長にハッキリ言い返してしまう。
 やられっぱなしじゃ話にならない。早速、タムとチャックは飲み屋で一杯やりながら作戦会議だ。
 娼婦のメイファンと高利貸しのチュン、そしてそれに先だってアパートで殺されていたロー・コクトンという男…どれも残虐な殺し方の猟奇殺人という共通項だけで、一見、何の関連もない。これは同一犯人による連続殺人ではないのでは…?
 しかし、どの事件も指紋ひとつないことから、タムはこれらが同一犯の犯行であると推理する。ひょっとして警察関係者の犯行かも…?
 警察ではさすがに猟奇殺人の多発に業を煮やして、不審人物などを一斉に取り調べるが、何しろ多くの人数だし収拾がつかない。結局すべては徒労に終わる。
 そんなこんなしているうちに、第4の殺人が発生。ジョギング中のキキという若い女が、公園で殺されたのだ。ただ、この女もただ者ではなくて、ヤクの売人だったらしい。現場に駆けつけたタムは、発見された凶器が鉛筆とハサミであることに衝撃を受けた。犯人は子どもなのか?
 そんな時、チャックは先日の一斉取り調べの時に出会った一人の人物を思い出した。その男リョン(チョン・シウファイ)は精神病患者で、警官に憧れて警察 学校も受験したが失敗したと語っていた。事件の異常性と指紋を残さない手慣れた手口は、この男の仕業だとは思えないだろうか。
 早速、リョンを尾行するタム。しかしこのリョンという男、タムが市場まで尾行すると、いきなりキレてやらかしてしまう。何とか機転を利かしてリョンを確保し、早速、警察署で取り調べ。しかし残念ながらこのリョンも、イカれてはいるが連続殺人の犯人ではなかった。
 捜査がゼロに戻ってしまったタムは、ここで原点に立ち戻ることにする。とりあえず直近の事件であるジョギング女の殺人現場に行き、彼女が殺されていた公園のベンチに座ってみた。すると、彼の心の中に犯人の心理が徐々に乗り移ってくる…。
 そんな折りもおり、夜道を歩いていたタムは、突然ヘルメットをかぶったバイクの男に襲われる。慌てて狭い路地に逃げ込んだタムは、バイク男にどこまでも 追いかけられる。しかし何とか形勢逆転、バイク男をねじ伏せることに成功するタム。ところがバイク男のヘルメットを脱がすとビックリ仰天。あのロー部長の 下にいた若い警官ではないか。何と捜査に関わってきて煙たいタムを追い払おうと、ロー部長に命令されて脅したのだという。さすがにこれには愕然となるタ ム。
 しかし同じ頃、仕事帰りのチャックの背後から、黒いクルマが静かに近づいていた…。

 開巻まもなく、奇妙な姉弟のエピソードが出てきてギョッとさせられる。後々これが伏線(というほどの事もない行き当 たりばったりな展開ではあるが)となるのだが、オープニング・シークエンスの後はご存じタム探偵が登場。デカい天眼鏡をのぞきながら相変わらずのスットボ ケた応対ぶりだ。
 ここにまたまた軽妙かつ脱力系のタイの歌が流れてくるのも、前作を 踏襲しているのだろう。おそらく前作の曲「ME PANDA」は、映画の効果もあって大ヒットしたのではないだろうか。そこで好評につき第2弾ということで、新たに新曲をねじ込んできた形跡がある。何し ろ今回はこの曲を猛烈プッシュしていて、後にタムとチャックが作戦会議を開く居酒屋でもガンガン流れているくらいだ。歌の内容は僕がタイ語がまったく分か らないのでチンプンカンプンなのだが、前作「ME PANDA」がタイトル通りパンダがどうしたこうした…って他愛のない内容だったのとイイ勝負で、歌い手の歌いっぷりから察するところ酔っぱらいや二日酔 いに関する歌らしい。何しろタイトルすら読めない(笑)状況でYouTubeから探してきたような状況なので、このあたりはご勘弁いただければ助かる。
 さて、またまた極限探偵タムの活躍が堪能できる本作。元々このシリーズがシリーズ化を前提にして製作されたのか、それとも前作のヒットを受けて後追いで作っていったのか、その製作過程にはちょっと興味が ある。3作とも微妙に作品スタイルが異なっているが、主人公タムの両親にまつわるエピソードが小出しになっているあたりを見ると、ひょっとしたら最初から 三部作で構想されていた可能性も否定できないからだ。それにしちゃあストーリー展開が結構乱暴なんだけどねぇ(笑)。
 前作は純粋な探偵ミステリーで、事件の描き方にちょっとパン・ブラザーズ独得のホラー風味をまぶしたかと思いきやラストでビックリ…という仕上がりだったが、今回はそういう意味でのホラー風味は控えめ。その代わり最初から異常な犯人像みたいなモノをチラつかせて、一種のサイコ・サスペンスに仕立てているのがミソだ。
 その一方で高圧的なチャックの上司みたいなキャラクターを出してきて、観客に変なミスリードをしようとしている。それにしたって、クルマで轢いてまで嫌がらせするってのはいかがなものなんだろうか。ちょっと乱暴過ぎやしないか。
 乱暴と言えば、タムの捜査の仕方も相当なもの。途中から殺人現場で「犯人の気持ちになりきる」プロファイリングみたいな捜査を始めるのだが、そんな我流のプロファイリングみたいなことで犯人に行き当たるだろうか。いやぁ、こりゃさすがに無茶だろう。正直言って今回の脚本は、犯罪捜査の部分についてはかなり雑である。











ここからは映画を見てから!












 その代わり…と言っては何だが、今回はチャックからの協力依頼で捜査が始まっていることもあって、タムとチャック二人の名コンビぶりに磨きがかかっている。
 そもそもチャックを演じるリウ・カイチーの人の良さそうなキャラク ターも相まって、前作、本作と陰惨でおどろおどろな犯罪を扱っている作品の中で、二人のやりとりはユーモラスな一服の清涼剤の役割を果たしていた。いたず らっ子みたいなタムとそれを見守る近所のオジサンみたいな二人のやりとりが、前作からのお楽しみのひとつになっているのである。これが「極限探偵」シリー ズの名物みたいなところもあった。二人でしゃべりながら食いまくるアジアン・フードも、実にうまそうだからねぇ。
 それだけに、本作の結末はさすがにショックだった。あれってもう ちょっと何とかならなかったのかねぇ。っていうか、ああする必要があったのだろうか。そのことも含めて、今回の脚本にはちょっと不満が残る。もっとも好評 にお応えしての第2弾の場合、いろいろ鮮度が落ちてることもあって前作からの劣化はどうしても免れない。そうなるとショック療法というかサプライズという か、このくらいの事をしないと作品鮮度は保てないと思ったのかもしれない。しかし、それでもねぇ…。ちょっとファンとしては複雑なものがある…というのが 正直なところだ。
 なお本作も兄オキサイドの単独監督作で、弟ダニーは今回はプロデュースにも参加していない。そういう意味では、本作はパン・ブラザーズ作品とは言えない
 そんな本作の終盤には、あの主人公の両親殺害に関して重大な手がかりがもたらされる。その真相はいかに?…というところで「つづく」とばかりに幕切れになるのである。
 これでは続編を見ないわけにはいかない(笑)。何ともにくい幕切れだ。だが、これって観客にとってはちょっと酷ではないか?
 今回のパンブラ連続公開で見た僕はほんの一週間ほど待てば第3作を見ることができたが、香港など向こうのファンは1年以上待たなきゃ見れなかったんだからね(笑)。

 

「コンスピレーター謀略/極限探偵A+」

 私立探偵タム(アーロン・クォック)は列車に乗っていた。
 彼はチョン(ツイ・クワイサン)から両親が殺害された事情を聞き、両親が当時、犯罪組織と関わりを持っていたことを知る。さらにその真相を探るべく、マレーシアへと向かっていた。
 マレーシアに到着したタムは、チョンから聞いていた関係者のチャイ(チェン・クァンタイ)の家へ。しかし生憎とチャイは不在。家にいた娘のチーワイ(チ アン・イーヤン)に聞くと、チャイは自分が経営するクラブにいるようだ。早速クラブに乗り込むタムは、そこでチャイに話を聞く。しかし、なぜかチャイの口 は重い。やっとのことでパンという男が関わっていると聞いたものの、それ以外はろくに語ってはくれない。徒労感を味わいながらクラブを出たタムは、その 後、バンコックに連絡をとる。すると、何者かに自宅が荒らされたというではないか。
 慌ててバンコックに戻ったタムは、荒れ果てた自宅に愕然とする。誰かがタムによる真相追求を恐れている…そう確信したタムは、自宅の一角に破壊された隠 し戸棚を発見。そこはすでに何かが盗み出されていて空っぽだった。盗まれたモノとは、両親が遺した犯罪組織の証拠だったのだろうか。タムは改めてチョンか ら「パンという男の親友だったファイチャイ(アニウ)を探せ」と言われて、再びマレーシアに飛ぶ。しかし異境の地で勝手が分からないタムは、今度は現地の 探偵を雇うことにする。街角に貼ってあったチラシで見つけた、チェン(ニック・チョン)という探偵の事務所に乗り込んだ。
 チェンは海千山千の男だったが、探偵としてはかえってその方が好都合だ。早速、チェンを雇って捜査をスタートさせることになり、彼のクルマに乗ってチャ イの元へと向かう。しかし何者かに尾行されていると見てとったチェンは、荒っぽい運転で追っ手を翻弄。さらにクルマを乗り捨てて、二人で走りに走って追っ 手を振り切った。しかし早速カネの話で揉めて、捜査開始直後にもの別れ。チェンがクルマに戻ってきたところを、顔見知りのマー刑事(レオン・リー)につか まった。実は、先ほどタムとチェンを尾行していたのがマー刑事だった。マー刑事はなぜか、チェンにタムを監視するように告げるのだった。
 一方、タムはまたまたチャイに会うが、チャイの口はさらに重くなっている。何とか食い下がったあげく、ボー叔父(リョン・ガーゴウ)という人物の住所を渡される。
 その頃、チェンは出かけようとしたところを何人もの賊に襲われ、得意のカンフーで応戦。しかし持病のぜんそくがぶり返して返り討ちに遭い、気づいたらシャツにデカデカと「このヤマから手を引け」と書かれていた。一体この事件には、何者が絡んでいるのか?
 同じ頃、ボーを訪れようと出かけたタムも何者かに襲われ、銃で撃たれるというテイララク。ビルの片隅に追いつめられたタムは、プロパンガスの爆発に紛れ て窓を破って脱出。窓の外の高架線に飛び移った。ところがすぐに列車が突っ込んで来たので、またまた高架線からジャンプ。遙か下の野外飲食店に落っこちて 命拾いする。チャイから情報を得たとたんの襲撃は、さすがに出来すぎではないか。
 いろいろあって探偵のチェンと合流したタムは、彼のクルマで再びチャイを訪ねることにする。ところがチャイの家に近づいてみると、何やら人だかりがして いる。警察まで来ているとはただ事ではない。何と家が荒らされたあげく、チャイの姿が消えてしまったというではないか…。

 

 1作目、2作目…と楽しみつつ見てきた「極限探偵」シリーズ。ついに問題の完結編に 到達。ところが今回の作品、今までの2作とはかなり佇まいというか趣が異なる。まずはオープニングの絵からして、えらく深刻な顔をした主人公タムが列車に 乗っている…という案配。「深刻」も「列車」もおよそ似合わないタムだが、今回は終始この調子。列車に乗っていたタムがめざすのは、今までとガラリと変 わった異境の地マレーシアだ。
 しかも今回は、事件の真相を探るべく中国は広州に出かけたりもする。もっとも、何でわざわざ広州に?…くらいの、単に場を変えたかっただけみたいな設定 ではあるが。オープニングのカンパニー・クレジットを見ると今回は中国本土の資本がかなり流れ込んでいるらしく、そのあたりの関係もあるのかもしれない。 中国本土で撮影すれば中国映画という扱いになって、税制の優遇とかもあるんじゃないだろうか。まぁ、そのあたりのことは「事情通」のみなさんにお任せする として…(笑)。
 今回の作品は前作とあからさまに続いていて、前作ラストで今回につながる手がかりがチラリと見え隠れしていた。だから前作を作っていた時には本作が構想 されていたことは明らかだ。にも関わらず、本作はかなり前2作から断ち切られている印象が強い。原題名タイトルからして、それまで入っていた「C+」「B +」がなくなった(邦題に「A+」とついているのは、やはり連続性を重視したからだろう)。何となくそういう意味では、本作は続編というよりどこか「番外編」といった色彩が強いのである。あるいは「極限探偵・外伝」とでも言うべき感じか。
 何より主人公タムがいつもと違う。冒頭の列車でのショットからずっと沈痛な表情。さすがに自分の両親の死に関わる捜査でヘラヘラしている訳にもいかない だろうが、あの人を食ったような愛嬌が「極限探偵」の売り。チャックの不在も手伝って、正直言って今回タムはかなり影が薄いのだ。
 では、ユーモアはどこかにいってしまったのか…と言えば、実はちゃんとそっちの「担当」も用意されている。それがタムがマレーシアで現地調達した私立探偵、ニック・チョン演じるチェンだ。
 ちょっと顔がまん丸気味で、長髪と相まって愛嬌たっぷり。エマーソン、レイク&パーマーが最末期の1978年に出したアルバム「ラブ・ビーチ」のジャ ケットに写ったグレッグ・レイクみたいな、パンパンにふくれた丸い顔(笑)。ただ僕は香港映画にも香港映画人にも詳しくないから、このニック・チョンとい う人物が「太め」で売ってるのか、たまたまこの作品の撮影時に太り気味だったのかは分からない。今回気になって調べてみたら、アメリカ映画セルラー(2004)の香港リメイク(!)コネクテッド(2008)に出ていた。役どころは何だったかと調べたら、「セルラー」ではウィリアム・H・メイシーが演じた警官の役だったとか。ということは、華やかさで売るより味わい深さで評価される役者ということだろうか。その他にもブレイキング・ニュース(2004)、エレクション(2005)、エグザイル/絆(2006)…などのジョニー・トー作品に出ていて、しかも結構目立つ役だったりしている。覚えていなかったのは、単に僕の頭のボケっぷりが災いしたということなのだろう。情けない限りである。
 ところが今回、このニック・チョンが終始大活躍するのだ。
 主人公のアーロン・クォックは両親の死の真相を追わねばならないから、本作では終始マジな顔をしていなければならない。そこで新たに「相棒」を持って来 て、そっちをユーモアとアクション担当にする…この作戦は、今回見事に成功したと言っていいだろう。このあたりはオキサイド・パン、さすがの発想である。
 ただ、このニック・チョンの探偵にウリ二つの弟がいて、彼が一人二役で演じることになる…って設定は、果たして必要があったのだろうか。妙にこの一人二 役が印象深いだけに、何でほとんど無意味にそんなインパクトの高いことをやったのかが分からない。相変わらず、脚本にはちょっと難があるような気がする。
 そんなこんなで終盤には、タムの両親を死に追いやった元凶が登場。この映画のヤマ場では、あっちこっちでいろいろなことが起きて見る方も大変。しかし、最終的にタムが陰惨な「復讐」や「敵討ち」をしなくて済んだ…なおかつ、見ている観客に何らかのカタルシスは与えることができた…というのはなかなか映画の作り方としてうまいし、映画の後味の良さや余韻を大切にするパンブラ…オキサイド・パンらしいところかもしれない。
 そんなわけで、主人公タムが少年時代からトラウマを引きずっていた事件も無事解決。本作では主人公はほぼマレーシアと中国に行きっぱなしだったが、映画 のラストに至ってようやく自宅のオンボロ事務所に戻ってくる。1作目、2作目でこの事務所を見慣れた我々観客も、思わず自宅に戻ってきたような懐かしくな る場面だ。
 ここで主人公が、家捜しされてひっくり返された自宅を黙々と片づける。そして何とか元の状態に戻せたと思った頃…、どこからともなくあの1作目冒頭を飾った脱力ミュージック「ME PANDA」が流れてくるではないか! すると本作で終始難しい表情をしていた主人公の顔に、あの不敵でいたずらっぽい笑顔が戻ってくる…。
 シリーズ3作を追いかけてきた観客には、まさに至福の瞬間と感じさせられるエンディングだ。さすがに僕も、三部作を「完走」したという感慨を覚えたよ。全部見てよかった!…と思える、素晴らしい幕切れだ。まさに感無量である。
 なお、本作もオキサイド・パン単独で作っている作品で、弟のダニー・パンはプロデュースにも参加していない。だから製作体制の変化から見れば、分岐点は2作目だったといえるのかもしれない。
 ともかくアクション、ホラー畑で素晴らしい実績を作りながら、最近もっぱら安易なホラー作品を乱発してスッカリ賞味期限切れしていたパン・ブラザーズ が、こんな楽しい探偵シリーズも作っていたとはちょっと意外。これは見ることが出来てよかった。正直言って「バンコック・デンジャラス」を最後に見放そう かと思っていたパン・ブラザーズだったが、本シリーズでちょっと見直した。やっぱりこの兄弟、タダモノではなかったんだよなぁ。

 



C+偵探 (The Detective)
(2010年・香港)寰宇娯楽有限公司(ユニバース・エンターテインメント・リミテッド)、銀都機構有限公司(シルメトロポール・オーガニゼーション・リミテッド)、マジック・ヘッド・フィルム・プロダクション・カンパニー 制作
監督:オキサイド・パン
製作:パン・ブラザーズ
脚本:オキサイド・パン、トーマス・パン
出演:アーロン・クォック(チャン・タム)、リウ・カイチー(チャック)、ケニー・ウォン(クォン・チーホン)、ラウ・シウミン(麻雀屋)、シン・フィオ ン(ロン/チョイ)、エル・チョイ(ミンの妻)、チャイアポン・セッタカム(ミン)、ナッタターシーニー・ピナヨーピヤラウィー(サム)

B+偵探 (The Detective 2)
(2011年・香港)
宇娯楽有限公司(ユニバース・エンターテインメント・リミテッド)、北京光線影業有限公司(エンライト・ピクチャーズ・カンパニー・リミテッド)、銀都機構有限公司(シルメトロポール・オーガニゼーション・リミテッド) 制作
監督:オキサイド・パン
製作:アルヴィン・ラム、オキサイド・パン、ツァン・ツァオ、チェン・ホンタ
脚本:オキサイド・パン、トーマス・パン
出演:アーロン・クォック(チャン・タム)、リウ・カイチー(チャック)、パトリック・タム(ロー部長)、チョン・シウファイ(リョン・ワイイップ)、イズ・シュー(リン・カーファイ)、ゴン・ベイビ(リン・ホイイー)、ワン・ズィーイー(弟)、チーウィー・ラム(姉)

同謀 (Conspirators)
(2013年・香港)楽視影業(北京)有限公司(ル・ヴィジョン・ピクチャーズ・カンパニー・リミテッド)、
宇娯楽有限公司(ユニバース・エンターテインメント・リミテッド)、太陽娯楽文化有限公司(サン・エンターテインメント・カルチャー・リミテッド)、広州市英明文化伝播有限公司(インミン・カルチャー・コミュニケーション・カンパニー・リミテッド) 制作
監督:オキサイド・パン
製作:アルヴィン・ラム、アレックス・トン、オキサイド・パン、ツァン・ツァオ、ドン・ペイウェン
脚本:オキサイド・パン、トーマス・パン、ン・マンチョン
出演:アーロン・クォック(チャン・タム)、ニック・チョン(チェン・フォンフェイ/弟チェン・ボーハオ)、チアン・イーヤン(チーワイ)、レオン・リー (マー刑事)、チェン・クァンタイ(チャイ)、アニウ(ファイチャイ)、ツイ・クワイサン(チョン叔父)、リョン・ガーゴウ(ボー叔父)

「影なきリベンジャー/極限探偵C+」2014年5月13日/「冷血のレクイエム/極限探偵B+」5月16日/「コンスピレーター謀略/極限探偵A+」5月24日・シネマート六本木「初夏のパン祭り」にて鑑賞

 


 

 

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