It's SHAW Time Folks !

 「英雄十三傑」

  十三太保 (The Heroic Ones)

 (2004/11/08)


 

これは何分にも中国の歴史ならびに香港映画の知識に乏しい人間が、日本語字幕なし(中文・英文のみ)のVCDを見て書いた感想文です。詳しい方から見ればおかしな点は多々あると思いますが、以上の事情をご考慮いただき、何とぞご容赦の上ご一読くださいませ。

 

 

 時は唐の王朝も末期の頃のこと…。

 黄巣率いる反乱者たちの軍勢が隆盛を誇り、都・長安までがその手中に落ちるという事態に陥っていた。唐の皇帝に忠誠を誓っていた沙陀国主の李克用(クー・フェン)は黄巣討伐の名を受け、実子・養子合わせて十三人の荒くれ息子たち…人呼んで「十三太保」と共に黄巣に対する事となった。自らの軍勢を東へと向かわせた李克用は「十三太保」と共に河中府へと赴き、そこで「反・黄巣」を唱える28の街の代表者を集めたのだが…。

 料理店宴会場での酒池肉林大宴会。曲芸団の余興に山盛りの酒と料理。さらにはキレイどころの小姐たち…。主催者の李克用はご機嫌だが、「反・黄巣」代表者たちを招いての宴席は今ひとつ盛り上がらない。一同で牛のツノの杯による一気飲みをやっても、むしろ盛り下がるだけだ。

 だが「十三太保」の連中はそんな空気にも構わず、傍若無人に振る舞っていた。特に十二男・康君利(ワン・チュン)は小姐たちに酒をぶっかけたり迫ったりとセクハラ気味。あまりに目に余るため、沈着冷静な長男・李嗣源(チン・ハン)に注意されるアリサマだ。

 湿りがちな雰囲気を一掃すべく、李克用は十一男・史敬思(ティ・ロン)に槍の技の披露を命じる。だが史敬思は一人で槍を振り回してもつまらぬと、宴席の代表者たちから相手を選ぼうとした。引っ張り出されたのが、皇帝の信頼も厚い大臣の朱温。史敬思のいささか無礼な振る舞いに、憮然とした態度を隠さない。

 「黄巣討伐の命を受けた李克用大王様の軍勢は、この地に来られてはや10日。…しかるにここで、こんなドンチャン騒ぎをしているだけとはいかがなものですかな?」

 「ふん、黄巣ごとき屁でもない。ヤツのためにお楽しみをやめる必要はないわ」

 そんな折りも折り…まるで狙い定めて見透かしたかのようなタイミングで、朱温の配下の者が息せき切って駆け込んで来た。「申し上げますッ!」

 何とこの城市の西門に、一人の大男が軍勢を連れてやって来たと言う。その男こそ、黄巣軍の中でも群を抜いた勇者とのウワサの孟絶海(ヤン・スエ)。早速、護衛兵相手に大暴れし始め、味方に多くの犠牲者が出ていると言う。

 この報告にわが意を得たりとばかり、朱温はこれみよがしに李克用を挑発した。

「李克用大王様におかれましては10万の精鋭兵士、500の護衛兵士、そして勇猛なる“十三太保”を手中にされておられます。いかにしてこの敵を倒されるのか、ぜひこの目で拝見したいものですな」

 これには李克用も強気で言い返す。「そんなヤツを倒すのに軍隊なぞ要らん。ここにいる“十三太保”のうち、誰でも望みの者を言うてみい。その者一人で倒してみせるわ

 そこで朱温はふんぞり返る「十三太保」の面々を物色し始めるが、ふと気づくとこの場には12人しかいないではないか。13人いても「女子十二楽坊」と言うのは確かにあったが、12人しかいないのに「十三太保」ではおかしい。

 「ブワハハハ! この有事にわしが何も考えていないとでも思っておるのか?」

 李克用が得意げに言うには、現在この場にいない十三男が西城を護って待機していると言う。ところが朱温の配下の者は、この十三男が連日酒ばかりくらったあげく、今は楼閣の上で居眠りをこいているとブチまけるではないか。これには思わず朱温もニヤリだ。「ならばその十三男の方に戦っていただきましょう!」

 ところが李克用はこれを聞いても一つも動じない。むしろ豪快に笑ったあげく、一同を伴ってこの十三男を見に行こうと言い出す。かくして李克用、朱温、そして「十三太保」の面々は、十三男がいる西城へと向かう事になった。

 さてその西城の真下では、問題の孟絶海がたった一人で大暴れ。見た目は大魔王シャザーンそっくり、ムキムキ筋肉ハゲ男の孟絶海は、バカ笑いしながら味方軍勢をなぎ倒していた。

 一方の十三男…甘いマスクの李存孝(デビッド・チャン)は、槍を抱えたままで楼閣の上でグースカ居眠り中。これには朱温もご機嫌。「おやおや、これは十三男どのがあやつを捕らえる姿をぜひとも見たいものだ」

 そして眠る十三男・李存孝に歩み寄り、起こすべく声をかけた。「おい、そこの山ザル!」

 すると李存孝、いきなり目を覚ましてガンを飛ばすからいい根性だ。「な〜にぃ〜、山ザルだとぉ〜?」

 「山ザルだから山ザルと言ったんだよ」

 するとこの存孝、いきなり朱温に一発パンチをお見舞いするではないか。これには朱温もブチ切れ。「キサマ〜大臣殴ってただで済むと思うなよ〜」

 そんなこんなを割って入ったのが、存孝の父である大王・李克用。だが朱温は憤懣やるかたない。「酔っ払いめ、それで敵が倒せるのか!」

 「何だったら賭けてみるか?」と、存孝は不敵に笑う。ならば朱温もあくまで強気。「私は唐の皇帝から賜ったこの玉帯を賭けよう!」と、ひすいをあしらった腰のベルトを指さした。すると存孝も負けてはいない。「ならばオレはこの首を賭けてやる!」…と、よせばいいのに早速話がエスカレートするから困ったもの。ちょうど朝飯前ならぬ昼飯前という事で、正午までには敵を倒して連れてこようと豪語だ。

 存孝はロープだけもらうと、ひらりっと楼閣から下へと舞い降りた。後は存孝に任せて…というわけで、李克用、朱温、そして「十三太保」の面々は、元の宴会場へと引き上げていく。

 さて存孝は、暴れ回っているハゲ筋肉マン孟絶海をチョチョイと挑発。たちまち両者のものすごいファイトが始まった。丁々発止、変幻自在の存孝の戦いぶりは、まるでそれを楽しんでいるかのようだ。

 一方宴会場では、刻一刻と時刻が迫っているのに一向に存孝が姿を見せない。朱温はニヤニヤと余裕の笑みだ。これにはさすがの李克用も少々心配になり始め、長男・嗣源と十一男・敬思に様子を見に行くよう命じた。

 だが存孝は、元々ピンチを楽しむような男。ハゲ筋肉マン孟絶海相手にまだ戦っていた。それでもさすがに楽しみ過ぎたかな…と気づいて孟絶海にロープを巻き付る。ところが存孝が勝負に一気にケリをつけると、孟絶海の引き連れて来た軍勢が勢いづいた。だがそれも、ちょうどいいタイミングで嗣源と敬思が駆けつけてくれたおかげで事なきを得た。「覚えてやがれっ」とばかりに立ち去って行く敵軍勢。

 さて李克用以下客人たちが興じる宴会場へと、ハゲ筋肉マン孟絶海をロープで引きずって来た存孝。その場の客人はさすがにビックリ。中でも朱温はアテがハズれてギャフンだ。そこに存孝が追い打ちをかける一言。

 「さぁ、約束の玉帯をもらおうか」

 「ば、バカな。これは皇帝から賜った品だぞ!」

 いざとなると前言を翻すセコい朱温に、存孝はピキッとキレた。「平気で約束を反故にするとは、オマエは自民党員か(笑)?」

 そして目にも留まらぬ早さで剣を抜いたからたまらない。アッと朱温が声を上げる間もなく、彼の玉帯は真っ二つにチョン切れた。「まぁいい、半分で許してやるよ」

 これには悔しいやら腹立たしいやら、半分にチョン切られた玉帯を押さえながら、朱温は怒り心頭で宴席を立ち去った。これには思慮深い長男・嗣源も心配げに一言。「父上、いいんですか行かせて?」

 「ま、よろしいんじゃないですか(笑)?」と、李克用はまたまたバカ笑いだ。

 さてその晩のこと。軍勢を率いての野営陣地で、大王・李克用は「十三太保」の面々を相手に今後の作戦を練る。場を仕切るのは、いつも冷静な策士の長男・嗣源だ。その嗣源と父・李克用は、先の存孝によるハゲ筋肉マン孟絶海生け捕りを高く評価。何しろ敵の中でも有数の戦士である孟絶海。これを捕まえたとあれば、敵に与える精神的ダメージは絶大だ。ところが四男・李存信(ナン・コングン)としては末っ子の存孝の特別扱いが面白くない。そんな事など大した事はない…と、みんなの前で大見得を切った。「オレならたった一人で長安に忍び込んで、敵の総大将の首を取ってやる!」

 この大口叩きにみんな大笑い。本人大マジメなのに笑われキャラにされてお気の毒な四男・存信だが、長男・嗣源の考えはちょいと違った。「待てよ…それは案外悪くないかもしれんぞ」

 ここで大軍勢と待機していても、事態は膠着状態だ。ならば「十三太保」単独行動で長安に忍び込めば、敵の親玉を倒す事が出来るかもしれない。そう言われると、大王・李克用もその気になってきた。さすがに全員出す訳にはいかないので、まずは「十三太保」でも最も勇敢で才覚のある存孝、敬思…はハズせない。さらに何人かをピックアップして…。すると事の発端となった存信が人選からもれてしまったではないか。これにはさすがに存信は我慢ならない。「元はオレのアイディアなのに」…留守番部隊になるのはごめんとばかりにブーたれた。

 だが李克用も、存信をハズそうと考えたのには理由がない訳ではなかった。何しろ存信と来たら、テメエ勝手で人の言うことを聞かない。だが今回の任務では、そんなテメエ勝手は他の人間を危険にさらす事になりかねないのだ。「オマエは存孝の指示を聞けるか? 聞けるのならば行ってもいい」

 今回の作戦は、十三男の存孝が指揮を執る。さすがに年下の存孝に仕切られる…とは面白くなかったが、ここは言うことを聞くしか他に道はない。一瞬ムッとした存信ではあるが、この条件をのんで一行に同行する事に相成った。

 かくして旅に出た「十三太保」のメンバーは9人。遙か長安を目指して道中を急ぐ彼らは、一軒の店に腰を落ち着ける事になった。

 「オヤジ、メシだ。早くメシをくれ!」

 ところがこの時に調子に乗った十二男・康君利が、また余計な事を言うからいけない。「さっさと頼むぜ、こっちは急いで長安に行かなきゃならねえんだからな!

 これには存孝、慌てて康君利に水をぶっかけて口止めすると、血相変えて打ち消す事しきり。「バカ言っちゃいけない。行き先は杭州だろ、杭州?

 そんなシラジラしいやりとりのせいか、場はすっかりドッチラケ。店のオヤジは「ロクなものはないが…」と言って、とりあえず大餅を出してきた。だが、これがまた飛びきりのマズさと来ている。ますます場の雰囲気は悪くなるばかりだ。

 ところがそんな店に武装した一隊がやって来る。たちまち緊張が走る「九太保」の面々。しかもこの一隊の親玉には、ちゃんとうまそうな鳥料理が出されるではないか。この待遇の違いは何なのだ?

 オヤジに尋ねると、黄巣「皇帝」配下の大将軍・張権だという。これはどう考えても長居は無用か。「九太保」たちはゆっくりと店を出ようとするが…。

 「黄巣“皇帝”が聞いて呆れるわ!」

 いきなり存孝が切り出すや否や、たちまち敵軍勢と始まるチャンチャンバラバラ。だが「太保」たちの強いこと強いこと。アッという間に手下を斬り捨て、残る張権将軍も取り押さえられた。その張権を殺そうと存信が剣を構えると、存孝がすぐに制止する。「こいつは生かしておこう。長安では旅のガイドが必要だからな」

 かくして張権将軍という人質を手に入れた「太保」たちは、殺した敵軍兵士の服に着替えて先を急ぐ事にした。

 だが問題の長安の街は…というと、案の定、厳重な警戒に守られているではないか。それでも張権将軍を剣で脅しつつ、堂々と正門へ。いよいよ本丸へと入ろうとしたところで、またまた警備の兵士に呼び止められる事になった。「ここからは皇帝の通行手形が必要だぞ!」

 「そんなモノは…ないッ!」

 アッという間に張権将軍を斬り捨てて、衛兵と「太保」たちとの間でたちまち始まるチャンチャンバラバラ。だが、さすがに相手が多勢過ぎて手も足も出ず、慌てて正門前から逃げ出すアリサマだ。

 何とか逃げおおせて一息入れる「太保」たち。まさか将軍を任じられた張権さえ入れないとは…と、存孝は改めて警備の厳重ぶりに驚く。かくなる上は正攻法だ。暗くなるまで待たねばならぬ…。

 さて夜の闇に乗じて長安に近づいていった「太保」たち。まずは正門周辺の見張りの兵士たちを次々倒す。次にカギ付きのロープを城壁のてっぺんに投げた彼らは、ロープを固定させてスルスルと上に登って行く。こうして城壁に登った「太保」たちは、ここでも見張りの兵士を次々倒す。こうして彼らはまんまと城内へ入って行った。

 彼らが城内奥へと進んでいくと、兵士たちがものものしく出動していく。何食わぬ顔をして存孝が尋ねてみると、「太保」が城内に侵入した事が分かって警戒態勢がとられたと言う。さらに「皇帝」が五鳳の塔へと上がって状況を見ることになった…という事も分かった。もちろん問題の五鳳の塔の前には、大勢の軍勢が守りを固めている。マトモに行っても忍び込める訳がない。

 そこで存孝は他の「太保」たちにこの場に残っているように告げて、一人で城壁を登って五鳳の塔が狙える場所を探しに行った。ところがこれを聞いた四男・存信は、案の定おもしろくない。「また存孝の手柄になるのかよ!」

 そして存信、よせばいいのにいきなり衛兵に向かって行ったからたまらない。たちまち大乱闘が勃発。そうなると他の「太保」だって知らんふりは出来ない。かくして存孝の建てたプランはボロボロになってしまった。もちろん五鳳の塔から様子を伺っていた黄巣「皇帝」も、この大騒ぎに気づいた。かくなる上は待っていられない。存孝は持っていた弓矢を慌てて取り出し、城壁の上から黄巣を狙った。

 「えいっ!」

 当たった!…いや、残念。矢は黄巣の王冠に刺さって無事だった。取り巻き連中は大声で叫ぶ。「天のご加護のおかげで、皇帝陛下はご無事だぞ〜っ!」

 仕方ない。存孝の居場所もバレてしまったのでグズグズ出来ない。存孝は慌てて戦っている「太保」たちと合流する。持ち前の勇気と腕で大暴れの「太保」たちだが、さすがに倒しても倒しても現れる軍勢には押され気味。ジリジリと後退を余儀なくされ、ここは逃げを打つしかない。

 ところがすべての城門は閉ざされ、いまやどこからも脱出する術はない。そして敵は斬っても斬っても、次から次へと雲霞のごとく沸いて出てくる。これではさすがの「太保」たちもさすがに困り果てる。何とか物陰に隠れて難を逃れるが、土地勘もない長安の街では、陸に上がったカッパ同然。このまま逃げまわっても捕まるのを待つばかりだ。

 結局彼らはたまたま現れた女の子(リリー・リー)に頼み込んで、彼女の家に匿ってもらうことになった。彼女は「十三太保」の勇名を知っていたし、存孝が孟絶海を倒した事も知っていた。だから存孝の事を、終始憧れの眼差しで見ていたわけだ。

 ところが夜も更けて、何を血迷ったのか四男・存信と十二男・君利が女の子の部屋に忍び込み、彼女を手込めにしようとするではないか。間一髪で存孝が割って入ったからいいものを、これには他の「太保」たちも呆れ返るしかない。結局、存信と君利はフテりながら家を去った。これでは残った「太保」たちも、ついついグチを垂れたくもなる。「ったく、四男兄さんと十二男弟は、いつもロクな事をしないんだからな!」

 それは今回も徹底していた。

 存信と君利が城壁から逃げ出すところを見られた事で、市内の警戒はさらに厳重になった。助けてくれなくていいから、せめて足を引っ張って欲しくない…と言いたいところだが、ともかくこのままでは「太保」たちが捕まるのは目に見えている。かうして「太保」たちは小作人のフリをして女の子の盲目の祖父に従い、北側の城壁のそばの畑を耕しに行くフリをして逃げ出す事になった。

 その別れの朝、女の子は存孝に手縫いの手ぬぐいを渡した。彼女の想いを痛いほど感じた存孝も、彼女と別れがたい気持ちでいっぱいだ。だが、すぐに行かねばならぬ。ともかく彼女と再会を約して、存孝は「太保」たちと隠れ家の家を離れるのだった。

 脱出作戦はまんまと成功。城壁をよじ登った「太保」たちは、無事に長安の都から脱出し、一路河中府の駐屯地へと逃げ帰った。

 作戦失敗とあって面目ない存孝以下「太保」たちだが、大王・李克用はすこぶるご機嫌。それと言うのも、お膝元の長安市内にまで追っ手が忍び込めたという事実は、敵・黄巣を脅かすに十分。それだけでも満足できると言うわけだ。

 ところが、これが先に逃げ帰った存信と君利の処遇となると、李克用のご機嫌も一変。作戦失敗の原因になるわ、匿ってくれた先の娘を犯そうとするわ、仲間を放って帰ってくるわ…で、まるっきりいいトコなし。今にも首をはねんばかりの怒りよう。さすがに存信と君利もビビりまくる。長男・嗣源が取りなしても言うことを聞かない。かくなる上は…と存孝が乗り出して、ムチ打ちの刑で許しては…と持ちかけた事で、何とか李克用のご機嫌も収まった。

 だが、これがまた存信と君利のカンに障った事は言うまでもない

 さて、このたびの一件に懲りまくった黄巣は、長安を出ていずこかへ行ったと言う。ならば十分戦果はあった。そして、敵の志気が低下した今こそ、一気に叩くチャンス。

 かくして「十三太保」率いる李克用の軍勢は、急いで長安に攻め入った。頭に去られた敵軍勢は呆気なく崩れ落ち、アッという間に長安は李克用の手に陥落した

 再び長安の都に立った存孝は、隠れ家にしていた家を訪ねてみる。だがそこは焼け落ちて、すでに見る影もなかった。近所の人間に聞いても要領を得ない。何でも黄巣一派が長安を離れる際に、あちこちに火をつけて立ち去ったと言う。それ以来、ここに住んでいた女の子と祖父の姿を見た者はいない…。

 それを聞いて、どうにもやりきれない思いに胸が塞ぐ存孝ではあった。

 さて、長安奪還に成功するや風向きが変わったのか、前々から李克用には何かと批判的だったあの朱温から、友好的に歓待するとの便りが届く。どこまで本気か分からないが、本当に友好的ならその歓待は受けるべきではある。断れば、無用の諍いを起こす素となるだけだ。

 そこで協議の末、問題の存信と君利を先遣隊として送る事とした。他の連中は都合が悪いか忙しいか…早い話がこいつらはどうでもいい余剰人員だったからだ(笑)。

 そんな存信と君利は、前回の失敗があるだけに何とか汚名挽回を…と必死。お付きの者たちを引き連れて、朱温のお屋敷に乗り込んだ。すると朱温は文字通り酒池肉林で歓待。これには存信と君利もスッカリご機嫌になってしまう。

 おまけに朱温は酔っぱらった存信と君利のグチから、彼らが存孝についていい感情を持っておらず、父・李克用の自分たちに対する処遇にも納得出来てない…という事を知る。こりゃあ使える…と朱温がほくそ笑んだのは言うまでもない。

 ならば…と朱温は存信と君利にオベンチャラ三昧。あげく李克用の処遇は不当だ…などと二人をヨイショ。これにすっかり嬉しくなった二人は、もはや朱温の言いなりだった。

 「次回はぜひぜひ父上・李克用さまにお越しいただくよう、お二人からも言ってくだされ!」

 こう言われたら、存信と君利もすっかりその気だ。帰った二人は案の定、朱温の意図に何ら裏はないと大宣伝。これで朱温の招きを断ると、後々何かと角が立つ…とまくし立てることまくし立てること。それを聞いて「その気」になってしまった李克用も李克用だが、ともかく大王御大自らが出かける事になったわけ

 だが、どうにもこの話は胡散臭い。存孝も敬思も、この話にはハッキリ言って乗りたくはなかった。せめて存孝が護衛についていくと言い出すが、軍の守りの指揮の仕事があるからここから離れられない。そもそも朱温と存孝は、先日の一件で揉めた間柄ではないか。ここは行かない方が良かろう。

 というわけで、李克用には敬思が付き添い、あとは護衛兵を引き連れて朱温の元へと出かける事になったわけ。

 今回も、李克用は思いっ切り大歓迎を受けた。李克用を歓迎するために、朱温は特別な趣向を用意していたのだ。それは長い橋を渡って、湖の中之島にある迎賓館へわたって歓待するというもの。「橋の名前は“太平橋”。これぞ大王様との和平を望む私の気持ちの表れでございます」…などと、朱温はスッカリ調子いい事を言っている。

 そして夜通しにわたる大歓待。酒に料理に歌に踊り、そして女。思いっ切りのドンチャン騒ぎ。酒も飲まずに見張りに徹しようとしていた敬思も、無理矢理酒を勧められて断れずにグビグビと深酒。李克用などはすっかり出来上がってしまった。

 結局李克用は眠りこけて、奥の寝室へと通された。敬思も酔いつぶれた。お付きの者たちも眠ってるかつぶれてしまった。

 すると、宴会場から朱温の配下の者がすっかり姿を消したではないか!

 その通り。これはやっぱり朱温の罠だった。ヤツは李克用を亡き者にすべく、この時が来るのを待っていた。いまや天下が乱れて唐の皇帝の力も及ばない昨今、ここで李克用さえいなくなれば、天下はこの朱温の下に転がり込んでくるのだ。

 橋の下には潜水を得意とする「忍者」軍団を控えさせ、さらには剣士たちや軍勢も配置した。いまや李克用は手中にしたも同然。不敵な笑みを浮かべた朱温は、配下の者に迎賓館への攻撃を命令した。

 「火矢を放てーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画を見てから読んで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この映画、実は大分前にある香港在住の方から、VCDで送ってもらっていた作品だ。だが、その時はまったく何が何やら分からない作品。香港映画マニアでもないから、これが何だかサッパリ分かっていなかった。ただ、ショウ・ブラザースの一連のデジタル・リマスターものだという事しか知らなかったんだよね。

 ところが今回、たまたま機を同じくして二つの事が分かった。ビデオで見たドラゴンvs7人の吸血鬼(1973)に出てくる香港俳優が、たまたまこの作品の主演者「姜大衛(デビッド・チャン)」という事が分かったのだ。

 さらに東京国際映画祭で見ることになった大酔侠(1966)の続編大女侠(「ゴールデン・スワロー」改題)(1968)の監督が、この作品の監督「張徹(チャン・チェ)」である事も分かった。そうなると俄然興味が湧いてくるではないか。

 そもそもショウ・ブラザースのデジタル・リマスター・シリーズの第一弾リリース20作品(「大酔侠」「香港ノクターン」の他、アン・ホイ監督&チョウ・ユンファ主演「傾城之恋」など…)の中に入るということは、この映画がある種の「有名作品」であることを物語っているに違いない。ならばこれは見るしかない…と、慣れないVCDをパソコンで一生懸命見てみる事にしたわけだ。

 ただ…何分にも僕は中国の歴史やら武侠モノってのに詳しくはない。これって何らかの史実やら伝承に基づいたお話なんだろうが、それをまったく知らないのだ。

 しかも香港映画にも詳しくないから、出てくる俳優も知らない。見ている人なら「常識」のレベルなんだろうが、僕にはまったく分からない。

 さらにこれはあちらのVCDだから、日本語字幕なんて入っている訳がないのだ。中文字幕と英文字幕のみ。それで一回通しでサラッと見た後で、あちこち止めて見たりもしてみた。

 ただ、漢字の中文といくらかは意味が分かる英文が並列して書かれているから、何とか意味は分かったと思う。このVCDの二言語字幕並列っていうのは便利だね(笑)。

 ついでに言えば、今回オープニングで「十三太保」のメンバーがそれぞれ馬に乗って大見得切る場面から映画がスタート。そこでは「太陽にほえろ!」とか「Gメン75」のオープニングみたいに、一人か二人のメンバーが出てきて見栄を切ると、そこに俳優名と役名が英文と中文で出てくるという念の入れよう。これには助かった。中文の漢字はいささか達筆すぎる毛筆のおかげで読めないところもあったものの(笑)、これがなかったら誰が誰やらサッパリ分からないって結果になっただろう。このオープニングを見た時には、天の助けだと思ったよ(笑)。

 もっと助かったのは、「十三太保」と言えども実際に何か行ったり印象に残ったりするのは、そのうち5名ぐらいでしかないって事。それ以外のメンバーは、ハッキリ言って「その他大勢」「一山いくら」の状態だ。早い話が…末っ子が一番活躍する事と言い、実写映画版「サンダーバード(2004)と似たようなものか(笑)。

 そんな訳でここからは、そんな無知な人間が分かる範囲内で語っている話とご承知の上でお読みいただきたい。

 さて、まず原題タイトルになっている「十三太保」だが、どうもこれって中国では一種の固有名詞になっているみたいだ。日本で言うなれば「四十七士」みたいなものか。向こうでは誰でも知っているくらいの有名な話だし、有名な名称ということになるらしい。「十三太保」が本当にいたのかどうかは知らないが、少なくとも大昔から伝承されている名前ではあるようだ。これって中国に詳しい人なら「常識」なのかもしれないので、堂々とこんな事を書くのは冷や汗モノなんだけどね。

 それが証拠に、これは「固有名詞」でありつつ「代名詞」的な使われ方もしている。例えばこの映画のチャン・チェ監督も、後年に「上海灘十三太保」(1984)なる現代劇をつくっている。これなんか「わんわん忠臣蔵」…とかいう発想と同じなのではないか? あるいは「東京ビートルズ」か(笑)? さらに中国の湖南省には「十三太保」なるチャイニーズ・マフィアがいるらしい…とか、ともかく勇ましいコワモテ男13人衆となると「十三太保」を名乗ったりしているような雰囲気もあるみたいだ。

 ちなみに余談を申し上げれば…今回の「十三太保」に限らず、「少林寺三十六房」とか「七福星」とか「五人少女天国行」とか「女子十二楽坊」(笑)とか、どうして中国関係の題名とか名称には数字入りのものが多いのか? これはすごく気になる問題だよねぇ。これって誰か知っている人いるだろうか? ちょっと説明してもらえれば嬉しいんだけど。

 閑話休題。そんな訳でこの「英雄十三傑」=「十三太保」は、中国の人にとっては「赤穂浪士」か「アーサー王と円卓の騎士」か。そこまでいかなくても、ある種の人々にはすぐピンと来るお馴染みモノらしいって事は間違いないようだ。

 ところが実際の映画を見たら、ちょっと驚いた。

 映画そのものはかなりエキストラも使っているし、衣装やらセットなども堂々としたもの。ちょっとしたスペクタクル大作で、この物語の「お馴染みさ」加減、チャン・チェ監督の大物ぶりを彷彿とさせてくれる大スケールの構えだ。特にセットの立派さには目を見張る。ハッキリ言って王道真っ正面の正攻法娯楽映画って雰囲気だ。

 ただし物語のほうはかなりヨレヨレで、ちょっとマトモに見るとツラいものがある。何より四男・李存信と十二男・康君利がしょうもないヤツと言うこともあるが、残りの兄弟やら父親・李克用が、毎度毎度ひどい目に遭わされて怒り心頭になっているにも関わらず、懲りずにこいつらにダマされること。それも一回や二回でなく毎度毎度というのはねぇ(笑)。兄弟を手にかけた後ですらまだ信じちゃって、無駄にまた兄弟が死んだりする。このあたりになると、こりゃ「自業自得」みたいな気がして来ちゃうよ(笑)。いい加減にしろという感じ。

 そもそも映画の冒頭でデビッド・チャンの十三男・李存孝が偉そうな態度さえとらなきゃ、最終的にあんなヒドい事にならなかったとも言える訳で、そう考えるとこいつら無意味にバカな事をやっているようにも見える。ちょっと「華も実もある英雄」とは思えないんだけどね(笑)。…まぁ、これはひょっとして元の物語があったとしたら、ソレ通りにつくってるだけかもしれないから、チャン・チェのせいにしちゃうのも気の毒かもしれないが。

 劇中でデビッド・チャンに淡いロマンスみたいなモノがちょっと芽生えたりするが、それもホンのほのめかしに終わってしまう。元々ロマンスを描く気がないのかもしれない。一応女性キャラを出すために入れたものの、まったく関心がないみたいだ。ともかく「男くささ」ムンムンで全開バリバリ。

 だがそんな物語云々は、実はこの映画では大した意味を持たない。あくまでアクション描写の見せ方戦い方で楽しむべき映画だからだ。

 何しろ「十三太保」の面々が強い強い! 槍をちょっと一振りすると、一気に敵が5〜6人は倒れてしまうからスゴイ。アクションも豪快だが、描写そのものも「白髪三千丈」のお国柄と言える。おまけにデビッド・チャンを筆頭に、みんなトランポリンか何かを使って飛ぶ跳ねる舞い上がる! 驚いたことにデビッド・チャンはいきなりヒラリと飛翔して、そのまま高い城壁まで到達してしまうからビックリ。もっとも…そうなると何故それまでロープを使って、わざわざ城壁をよじ登っていたのかがよく分からないのだが…(笑)。

 こう挙げていくとキン・フー=「グリーン・デスティニー」系列の作品に見られるような、ファンタスティック・アクションの雰囲気が濃厚だと思われるかもしれないが、実はこの映画はそれらのモノとはいささか一線を画する。飛ぶにしたってワイヤーでふわ〜っと飛ぶ場面はホンのわずか。大抵がトランポリン使用による、もっとナマに近いアクションなのだ。僕らから見れば同じような「非現実的」アクションであったとしても、おそらくは作り手側の意識はかなり違う。たぶんチャン・チェ監督は、華麗で優美な舞うようなアクションには興味がないはずだ。この人の狙っているのはもっとナマっぽくてハード…という言葉を使うべきかどうかは分からないが、少なくとも「非現実的」アクションの中での、それなりの「現実性」というものは追求していたのではないか?

 …と、僕がここで言うのには、実は大いに理由がある

 この映画のアクション描写そのもの…映画全編に漂うテイストそのものが、僕らの目から見るとかなり強烈なんだよね。

 何しろ血ナマ臭い。斬られると血のりがベットリ。たちまちみんな真っ赤っか。確かに一頃の日本の時代劇もそうだったけど、それって大分後になってからの事だろう。これには少々ギョッとした。

 しかもこの映画では、二枚看板スターと思われる人物が二人とも、ドラマが終了する前に死んで退場してしまう。まずは史敬思を演じるティ・ロンが、敵に取り巻かれて孤軍奮闘の惨死。腹に手刀を何本もブッ込まれた上で、血まみれの奮闘を続けたあげくの死。それも仁王立ちして目をカッと見開いての壮絶死だ。これって香港映画にはありがちな趣向なのかもしれないが、それにしたってスターのこの死は鮮烈過ぎる

 さらにさらに…こいつは主役と思っていた李存孝役のデビッド・チャンまでが、ドラマ終了を待たずに死んでしまう。それもただの死ではない。両手両足頭をロープに縛られ、それを五方向バラバラに馬で引かされて引き裂き殺し(!)というトンデモないもの。名付けて「五馬分屍」という殺し方のネーミングまで出てくるが、まさかヒーローがこんな事になるとは思ってるわけない。僕は最後の最後まで、どういう方法か知らないが超ウルトラC技で脱出するか、とてつもないラッキーな偶然が起こって助かるものと信じ切っていた。だから本当にデビッド・チャンがバラバラに引きちぎられてしまった時には、唖然呆然で口アングリという状態(笑)。映画見ていてこんなに予想外で驚かされた事って、ひょっとしたら「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」(1980)エンディング以来かもしれない。とてつもないショック!

 ともかくこの殺し方といい、普通こいつをここで殺すか?…と言いたくなる発想といい、チャン・チェってかなり「濃い人」じゃないかと思ったよ。とにかく「殺し」の濃さ・凄さがハンパじゃないからね。

 まぁ考えてみると、それまで世界の映画のバイオレンス描写って、黒澤明「用心棒」(1961)、「椿三十郎」(1962)から、セルジオ・レオーネ「荒野の用心棒」(1964)にはじまるマカロニ・ウエスタン、さらにはサム・ペキンパー「ワイルドバンチ」(1969)やらアメリカン・ニューシネマの「俺たちに明日はない」(1969)…ってのが一連の流れであると思っていた。だけどこのあたりの血まみれ描写を見ていると、香港剣劇映画の残酷描写ってのがこの中でどう位置するのか気になって来たんだよね。これが香港全般のスタンダードなのか、それともチャン・チェって人が突出してたのか、そのへんもかなり気になる。これはいろいろ探ってみる価値ありなテーマかもしれない。

 デビッド・チャンとティ・ロンの二人は、知らない僕でもハッキリ「スター」という扱いだと分かる。笑っちゃったのは、大王・李克用を演じたのが北京原人の逆襲(1977)で悪役をやってたガハハ・オヤジのクー・フェンなる役者だったこと。なるほどここでもやたらとガハハ笑いをブチかまして、下品かつ無神経なところを見せていたから笑える。

 あと知っている顔と言えば、「燃えよドラゴン」(1973)で怪力男を演じ「空手ヘラクレス」(1973)なんて「いかにも」な出演作まであるヤン・スエ。そう言えば、かつてテレビの「Gメン'75」香港ロケ篇にも登場してなかったっけ? このヤン・スエが孟絶海役で、またまた十八番のムキムキ・マンぶりを見せているのがおかしい。まぁ、この人って「007/私を愛したスパイ」(1977)でジョーズをやったリチャード・キールと同じで、こういう使い方しか出来ないのかもしれないけどね(笑)

 他にも「十三太保」の次男役に、「ドラゴン危機一発」(1971)、「ドラゴン怒りの鉄拳」(1971)を監督してブルース・リーを売り出したり、ジャッキー・チェンを発掘したりしたロー・ウェイの名前があってビックリ。ロー・ウェイってやっぱり最初は役者やってたんだねぇ。そして「こんな顔してたんだ」…としげしげと見ちゃったよ。もっとも全編ほとんどセリフもアップもなかったけど(笑)。

 さらにはアメリカ・ハリウッド映画ファンもご存じ…マトリックス(1999)、グリーン・デスティニー(2000)のアクションを手がけたユエン・ウーピンも脇で出ているらしい(ただし、残念ながら僕にはどの役かは分からなかったが)。これも、まだ下積み時代なんだろうか?

 このように、必ずしも香港映画ファンでなくても聞いた名前、見た顔が絡んでいる作品…それがこの「英雄十三傑」だ。僕は今回この作品を見てみて、ちょっと得した気分になっちゃったね。

 

 

<参考>

独立国家 真珠帝國

http://www2.wbs.ne.jp/~jrjr/index.htm

 


十三太保 (The Heroic Ones)

a.k.a. Shaolin Masters,

Thirteen Fighters

(1970年・香港)ショウ・ブラザース 制作

日本劇場未公開

監督:チャン・チェ

製作:ラン・ラン・ショウ

脚本:チャン・チェ、イ・クオン

出演:デビッド・チャン(十三男・李存孝)、ティ・ロン(十一男・史敬思)、チン・ハン(長男・李嗣源)、ナン・コングン(四男・李存信)、ワン・チュン(十二男・康君利)、ロー・ウェイ、ワン・カンユー、クー・フェン(沙駝国主=李克用)、チン・セイ、リリー・リー、ヤン・スエ(孟絶海)、ユエン・ウーピン

2004年10月21日・VCDにて鑑賞


 

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