動物園前シネフェスタ

(2007/04/16)


動物園前シネフェスタは、大阪の映画ファンにとってちょっと特別な意味を持つ映画館だったようです。特にインド映画のファンにとっては、「聖地」とも言える場所だったとか。理由は本文中で明かされますが、そのあたりが「思い出に残る映画館」たるゆえんだったのでしょう。そんなシネフェスタの終焉を、とめさんが報告してくれました。


 

 最後まで伝説を生んだ動物園前シネフェスタ

 とめ

 (写真も)

 

 

 「動物園前シネフェスタ4は平成9年7月18日フェスティバルゲートの開業に伴い営業を開始 いたしましたが、施設の再生計画に伴い本年3月31日をもって閉館することとなりました。 (フェスティバルゲートは引き続き営業いたします。)諸般の事情により、閉館という苦渋の 選択をせざるをえない状況を何卒ご理解の上ご了承いただきますようお願い申し上げます。10年間にわたりシネフェスタクラブ会員の方をはじめとして皆様方の暖かいご愛顧を いただきましたことを心より感謝申し上げます。
 また皆様の今後ますますのご健勝をお祈り申し上げます。」

 

以上は動物園前シネフェスタ閉館の挨拶です。

 フェスティバルゲートってなんぞや?という方はコチラを参照下さい。

 つまり、常にろくでもないということを露呈し続ける第三セクターっていうのもののコチラも大きな失敗例の一つってことなんですよ。

 

 私がこの映画館を初めて訪れたのは2001年3月17日 香港映画の『流星』を観るためでした。

 フェスティバルゲートが出来てから4年。まだ多少の賑わいはあるものの、長くはないだろうな?と感じさせる客数でした。それでも、まだ館内にあるジェットコースターは稼動しており、初めてここで映画を観たときは静かなシーンに聞こえるジェットコースターの「ゴ〜」という音がすごく気になったのを覚えてます。だんだんジェットコースターの稼働率が減り、ここに映画を観に行ってもジェットコースターの音が響くことはなくなりましたけどね。

 2度目にこの劇場を訪れたのは2001年6月9日。この日は私にとって非常に貴重な日となりました。

 そう「マサラシステム上映」の初体験。

 「マサラシステム」というのは、インドでは映画館で手拍子に歓声、そして踊るなんてことも当たり前だということで、インド映画をインドでの鑑賞方式で観よう!ということで始められた無礼講上映。さすがに現地でも紙ふぶきにクラッカーはないんじゃないかと思うのですが・・・(笑)。

 上映作品は『バーシャ!踊る夕陽のビッグボス』。この作品は1998年に公開された『ムトゥ 踊るマハラジャ』で日本中を吹き荒れたインド映画ブームの時に買い付けはされていたものの、インド映画ブームの潮が引いたためにお蔵入りになっていた作品です。

 この作品をインド映画ファンというだけで公開に漕ぎ着けた方たちもすごいですが、その作品を上映するだけでなく、今までどこの劇場でも行われていなかった「マサラシステム」での上映を許可したこの劇場の英断はすごい!記念すべき「マサラシステム」上映第一回は2001年6月2日。この日からこの劇場は「インド映画の聖地」と呼ばれるようになりました。

 そしてこの劇場は2007年3月31日の劇場としての終焉の前に、「インド映画の聖地」としての終焉を2007年3月25日迎えます。

 上映作品はもちろん『バーシャ!踊る夕陽のビッグボス』。聖地でのラストマサラ!となる上映回は15:35から。私が劇場に到着したのは14:50頃。特設売店の設営が行われている途中だったのですが、すでにラストマサラに臨む人たちがワサワサ。

 15:00過ぎに特設売店が開店。開店と同時に紙ふぶき・クラッカーセットを購入する人たちの列が出来てました。

 たくさんのインド映画ファンの中で、上映開始時間を待っていると支配人さんからの一報が。

 122席のスクリーン4番での上映予定を、15:00を過ぎた時点で整理番号が120を超えたため、上映開始が少し遅れますが、現在『マトリックス』を上映している223席のスクリーン1番に移しますとのこと。沸き起こる歓声。『マトリックス』を破ったぜ!最後にまた一つ伝説を生んだのですが、こういう英断をしてくれる支配人さんのいる劇場が無くなるというのもまた悲しいものです。

 

(写真左)上映終了後の館内。 (写真右)床を覆いつくす紙ふぶき(笑)。

 マサラシステムによる上映は開始から、熱気ムンムンのノリノリ状態。黄色いタオル*注を振り回し、最前列では映画にあわせてのダンス披露。これでもか!とみんな大暴れ(笑)。上映終了後は、今までの感謝を示し、支配人さんへ花束贈呈。支配人さんの挨拶のあと、撤収開始!

 次の上映があるからとみんな大急ぎで劇場の片付けとなったのですが、紙ふぶきだらけとなったこの劇場がなんと15分で元通りに片付いたとか・・・。恐るべしマサラパワー。

 祭りのあとほど寂しいものはないですよね。最終日にはもう一度ここを訪れるつもりでいても、やはり「ラストマサラ」には感慨もひとしおです。

 

 そして本当のラスト。2007年3月31日

 

 最終日に上映される作品はリクエストで選ばれた『ローマの休日』『スタンド・バイ・ミー』『ゴッドファーザー』の3本。

 私が選んだ作品は

 すみません写真光っちゃってますが、『ゴッドファーザー』

 仕事終わって、そのままダッシュ。劇場に着いたのは18:00過ぎ。上映は19:05なので余裕だと思っていたら整理番号は既に38番!やはり最後の最後ということで来る人は多いんですねぇ。

 とりあえず上映開始まで時間があるので、フェスティバルゲート内に辛うじて残っている(笑)、モスバーガーで腹ごしらえすることにして一度劇場のある7階から下へ降りる。食事を終えて店を出ようと席を立ったところ、前の席に座ってた60歳前後くらいの御婦人と店の女の子の会話が耳に入る。老婦人はここに来るのは今日が最後だと思うとおっしゃってて、なんでもいつも映画を観るためにココへ来て、この店に寄って飲み物だけなのか、ハンバーガーもなのか?はわかりませんが、お持ち帰り用に袋に入れてもらって劇場へと行っていたようです。どれくらいの頻度でその老婦人がココへやってきていたのかはわかりませんが、店の女の子と顔見知りになるくらいだから、月に一度くらいは来てたんでしょうね。なんだか映画館を題材にしたショートストーリーを観たような気分になりました。

 そして劇場へ。『ゴッドファーザー』上映はスクリーン1。この劇場で一番大きなスクリーンです。人数はどれくらい入っていたでしょうか。50人以上はいたかな?

 今までテレビでしか観たことがなかった『ゴッドファーザー』、やはりこうして劇場の大きなスクリーンで観ると全然違います。最後にこの作品選んで本当によかったと思いましたよ。

 『ゴッドファーザー』は名作だ!という上映後の感動に浸りつつも、あぁこれでこの劇場とはお別れなんだぁ。という寂寥感。複雑な気持ちで席を立ち、外に出ると何人かがそれぞれの思いで、カメラのシャッターを切ってました。

 最後に写真を撮る人のために少しの間劇場の扉を開けていてくれたので、私も声をかけて撮影させてもらいました。

 もう開くことのない幕。誰もがちょっぴり感傷モードに浸れそうな写真でしょ。

 

 私がこの劇場で観た作品は

『流星』から始まって『バーシャ!踊る夕陽のビッグボス』『ロンドン・ドックス』『スパイキッズ』『オー・ブラザー!』『息子の部屋』『こころの湯』『KT』『マッリの種』『ゲロッパ!』『昭和歌謡大全集』『MUSA−武士−』『いつかA列車に乗って』『殺人の追憶』『真珠の耳飾りの少女』『マッハ!!!!!!!!『東京原発』『誰も知らない』『16歳の合衆国』『千の風になって』『スウィングガールズ』『オールド・ボーイ』『Mr.インクレディブル』『コーラス』『名探偵コナン 水平線上の陰謀(ストラテジー)』『インファナル・アフェアV』『甘い人生』『ベルベット・レイン』『親切なクムジャさん』『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』『力道山』『寝ずの番』『インサイドマン』『ユナイテッド93』『紙屋悦子の青春』『出口のない海』『グエムル -漢江の怪物-』『16ブロック』『チャンドラムキ 踊る!アメリカ帰りのゴーストバスター』『ヴィーラ 踊るONE MORE NIGHT !』『トンマッコルへようこそ』『王の男』『魂萌え!』

 

 そうそう私が初めて岡本喜八監督作品もこの劇場でした。

 2002年2月2日。『助太刀屋助六』の完成に合わせての喜八監督の特集上映。私が選んだ作品は『独立愚連隊西へ』。岡本喜八監督のミニトークショーもあり、その時はそんなに岡本喜八監督のこと知らなかったのですが、ミーハーな私はとりあえず参加。その頃はまだ岡本監督の素晴らしさがわからずに、ただ「へぇ〜」って物珍しさだけでトークショーを見ていたのですが、その後、岡本喜八監督が好きだ!って言えるようになってから、このときのことをどれほど悔しく感じてるか・・・。

 今だったら喜んで挙手して質問したのに!サイン本だって買ったのに!

 

 この劇場の営業は10年。そして私のこの劇場とのお付き合いは6年。本当に短い期間でしたが、これだけの思い出を残してくれたこの劇場のことはきっと忘れないでしょう。これからもまたいろんな劇場で映画を観るでしょう。でもただ映画を観る場所としてだけではなく、何か思い出の残せる映画館にまた出会えたらいいな。

 

(*注)黄色のタオルについて:

『バーシャ 踊る夕陽のビッグボス』の劇中で黄色いタオルを振り回して踊るシーンがあるんですが、それを真似てマサラシステム用に製作されたものです。主人公がリクシャー(インドのバイク型タクシー?ミニタクシー?)の運転手ということで今までのバージョンには「大阪リクシャー協会」とプリントされていたのですが、ラストマサラ用のバージョンとして新たに文字が入れられ作られたものです。

 

 

 動物園前シネフェスタ

 所在:大阪府大阪市浪速区恵美須東3-4-36 7F

 経営するのはシネフェスタ(株)で、大阪興行協会の有志等(逢阪興業(株)、 岡島興業(株)、岡本興業(株)、(株)エイアンドエス、近畿興業(株)、サンポート(株)の興行六社で計二十三館を経営)が共同出資して設立。フェスティバルゲートを総合アミューズメントビルとして立体遊園地、物販・飲食施設のほかに「文化的な施設を」というデベロッパー側の要望に、前述の五社とともに二十一世紀に向けて、新しい形の興行・映画館経営・地域活性化のために、1997年7月18日(金)にOPEN。独立系興行会社が共同で劇場を経営する全国で初のケースとなる。

 

 スクリーン1

 座席数:223席 スクリーンサイズ:9m×3.8m

  音響設備:SR-D(ドルビーデジタル)。dts(デジタル・シアター・システム)。SDDS(ソニー・ダイナミック・デジタルサウンド)

 

 スクリーン2

 座席数:135席 スクリーンサイズ:6m×2.4m

  音響設備:SR-D(ドルビーデジタル)。

 

 スクリーン3

 座席数:122席 スクリーンサイズ:6m×2.4m

  音響設備:SR-D(ドルビーデジタル)。

 

 スクリーン4

 座席数:122席 スクリーンサイズ:6m×2.4m

  音響設備:SR(ドルビー・スペクトラル・レコーディング)

 

 映 写 機。スピーカー

 * 35m映写機 :東芝電興 TD-9

 * 16m映写機 :EIKI EX-9100

 * メインスピーカー:ALTEC A7/ME994A

 * サブ・ウーハー:JBL 4645B

 * サラウンド:JBL CONTROL 5 PLUS

 

 

とめ

飄々とした持ち味で古今東西の映画を語り、現在はなぜか邦画の旧作にどっぷり浸かっている大阪のとめさんは、インド映画の大ファンでもあります。今回は自ら企画を持ち込んで、熱いレポートを提供してくださいました。ありがとうございます。

とめの気ままなお部屋

http://www.cat.zaq.jp/tomekichi/

 

 

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