「火星人地球大襲撃」

  Quatermass and the Pit

  (Five Million Years to Earth)

 (2000/09/17)


 ここはロンドンの街。その一角、ホブス・レーンでは地下鉄工事が行われているところ。ところがその掘削工事の最中に、何と人骨が出てきたから大変。早速、人類学者のロニー博士(ジェームズ・ドナルド)と美人の助手バーバラ(バーバラ・シェリー)が発掘に当たることになった。この人骨、どうもかなり古代の猿人の骨らしい。ところがそこから出てきたのは人骨だけではなかった。どう見ても人工の金属のような、巨大な構造物が埋もれているらしい。

 宇宙学の権威のご老体クォーターマス教授(アンドリュー・カー)が呼ばれてきた時には、発掘はだいぶ進んでいた。最初は戦時中の不発弾かと軍から兵士が派遣されて発掘を進めたが、掘れば掘るほど爆弾のたぐいとは見えなくなってくる。まったく何でこのわしがこんな発掘に呼ばれなきゃならんのかねとボヤく教授。何か新型のミサイルかとの疑いからクォーターマス教授が呼ばれてきたのだが、肝心の教授は近頃夜のほうがサッパリ元気がないことを気に病んでいて、余計なことを考えている余裕がない。だが教授はふとその発掘現場で美人助手バーバラを見つけて、なぜか俄然元気がみなぎってくるのを感じた。ついでにこの物体を一目見て、ミサイルなんてシロモノではないと喝破した。しかもこの物体の下からまたもや猿人の骨が出てくるに至っては、絶対に最近のモノではあり得ない。では何千万年も前の地層に埋まっているこの物体とは?

 さらにこの物体、どんな火力でも切断できない。入口らしい穴が現れたが、そこも分厚い金属状のモノで閉ざされたまま。この入口らしき穴に入り込んだ兵士が、何か恐ろしいものを見たと怯えて出てきたのは、ちょうどそんな時のことだった。

 イヤな予感を抱いたクォーターマス教授は、この物体が埋まっている地盤の上に注目した。そこには今は空き家のビルが建っている。聞くところによれば、ここでは夜中に変な物音が聞こえてきたり、妙な幻覚を見るという噂が絶えないとか。フト気づくと、そもそもホブス・レーンという地名のホブスとは悪魔の別称ではなかったか?

 この土地の伝承を古文書から探っていくと、どんどん怪しげな伝説が後から後から出てくる。クォーターマス教授はいつの間にかロニー教授の助手のバーバラを自分の助手みたいに使っていろいろ調べ出すが、それってまさかこのバーバラが美人ゆえの職権乱用ではないだろうね?

 この地層から出てきた猿人の骨にも、ちょいと不思議な点があった。どれも五千万年前の猿人の骨に違いないのに、妙に頭蓋骨が発達しているのだ。クォーターマス教授はロニー博士の研究所にも入り浸って何だかんだと話を聞きまくるが、これだってまさかバーバラと会いたいがために何かと用事をつくってるわけはないよね? たしかに彼女のセーターの奥の胸のふくらみは、かなりの豊かさではあるけれども。

 このロニー博士はそんなこと少しも疑わず、教授に自分の研究について楽しげにいろいろ話す。特に博士のご自慢は、お手製のヘッドフォンみたいなものを頭に着けると、脳で考えたものが映像としてモニターに映し出されるという新発明の機械だ。ひょっとして今クォーターマス教授をこの機械にかけたら、バーバラの胸のふくらみ映像が映し出されたりしないか? いや、まさかそんなことはあり得ない。上品で学識のある英国紳士に限ってそんなこと…。

 すっかり掘り出された構造物は、誰の目から見てもミサイルなんかじゃない。ここでクォーターマス教授は「宇宙船だ!」と男らしく断定する。もちろんそれ以外には考えられないよね。

 ついには最新鋭のドリルを使って入口をこじ開けようとするが、ドリルなんて全く歯が立たない。その代わりに妙な振動が起きて、教授も博士もすっかり気持ちが悪くなる始末だ。ところがこの振動が良かったのか、入口の壁が突然ひび割れて崩れたではないか。

 ややっ!

 中には蜂の巣状の構造物に、見慣れない生き物が何体か乗っかっていた。その姿と言ったら…。

 「悪魔だ!」

 う〜ん。そうとも言える。でも、俺にはイナゴの佃煮としか見えないんだけど…。でもそれは、キリスト教徒ではないバチ当たりな僕の見間違いだろう。みんなはその気色の悪い姿に吐きそうになるが、ロニー博士は狂喜乱舞でいそいそとイナゴ、いや悪魔ちゃんの標本づくりに余念がない。こいつは一体何者だ?

 それに不思議なことはもう一つあった。宇宙船と言いながら、この構造物の中には機械らしきものがからっきしない。では、これってどうやって動いたんだ? でも宇宙船と断定した教授は、今さらそれを撤回するわけにはいかない。胸のふっくらしたバーバラの手前、カッコ悪いとこは見せられないのだ。

 軍のお偉いさんや政治家の面前で、クォーターマス教授はまたまた男らしく断定する。

 「これは火星から来た宇宙船だ」

 これにはみんなも異議を唱えた。火星って生き物なんかいない死の星ではないか。だが、いまやバーバラの胸のふくらみに男のフェロモンがモリモリと蘇ってきた教授は、そんな反対意見にはひるまない。ううむ、バイアグラ飲んだときでも、こんな効果は得られなかったがのう。

 「今は死の星だが、かつては生き物がいた。今から五千万年前にはね!」

 かつて地球にやって来た火星人の宇宙船があれだ。彼らは地球で猿人にある実験をした。脳を発達させた猿人がどうなったかって? それが今の人類の祖先となったのだ。そして人類は、彼らのイメージを「悪魔」として伝承してきた…。

 だが、お偉いさんたちはこんな暴言には納得できなかった。俺たちがあんな佃煮どもに男にしてもらった…もとい、知的生物にしてもらっただとぉ?

 みんな怒って教授の言うことなど相手にしない。でも、バーバラにまた男を蘇らせてもらった教授は断固として言い張る。反論は許さない。

 ところがそんな晩のこと、例の宇宙船に道具を取りに戻ったドリルの技術者が、訳もわからぬパワーに脅かされてあわてて夜の街に飛び出した。しかも彼の行く先々で突風は吹くわモノはすっ飛ぶわ、もう大変。

 怯えきって半狂乱のこの男を、情け容赦なく問いつめるクォーターマス教授。するとこの男はとんでもないことを言い出すのだ。

 奴らがやって来る。ウジャウジャやって来る。奴らは生きてる。どんどんでっかくなっていく。

 ううむ…とうなった教授が自らの股間を見つめると、バーバラの色香でみるみる股間もでっかくなっていくではないか。こいつもまだ生きてるぞ!

 いかん! ひょっとしたら奴らは死んではいないのではないか? そう思った教授はまたまたそれをいい口実にロニー博士とお目当てのバーバラを引っぱり出し、例の宇宙船でロニー博士ご自慢の新装置を実験した。自分の頭に例のヘッドフォンもどきを当てがって、どんなイメージが脳に浮かぶか見てみようというわけだ。しかし教授にはイヤらしい妄想は浮かんでも、肝心かなめの火星人イメージは浮かんでこない。そんな時、例のバーバラがおかしくなった。

 チャ〜ンス!

 教授は例のヘッドフォンもどきを彼女の頭にあてがい、ドサクサにまぎれて彼女の体に触りまくった。すると、とんでもないイメージがモニターに浮かぶではないか。

 それは太古の火星のイメージ。イナゴ火星人が大群で押し寄せ、手に手に何か武器のようなものを持って大暴れ。そして地表は荒れ果てた…。

 そうか、奴らは並はずれた精神パワーを持っていた。それで麻原みたいに空中に浮かんだ…じゃなくって、宇宙船を動かせるまでにパワーを増幅させたが、知的生命体の常として憎悪には勝てず、お互いを滅ぼしあって自滅した。だが、その憎悪の精神パワーはいまだに死なずに残っているのだ。人類が彼らを「悪魔」として伝承してきたのには理由があった。その強大な憎悪のパワーゆえなのだ!

 だがお偉いさんたちは、止める教授の言うことなど聞かなかった。今夜、発掘現場で記者会見するぞ、色ボケ教授の言うことなど聞けるか!

 狭い発掘現場にバカなマスコミがひしめいてギューズメ。ところが思った通りに事は起こった。宇宙船が怪しく光り始め、現場は地震のように揺れだし、逃げまどうバカなマスコミ連中の上に瓦礫が容赦なく降り注いだ。大パニック。

 これをきっかけにロンドン中で異変が起きた。突風が吹き荒れた。建物が崩れた。道路に穴が開いた。人間たちの中には何かに取り憑かれたようになる者もいて、こいつらが自分の精神パワーで他の人間たちを襲い始めた。おかしくなった連中の中には、あのバーバラもいた。

 すると教授もバーバラに気に入られたいと思ったのか、自分もそれにつき合って火星人に取り憑かれておかしくなった。そんな色ボケ教授を止めたのは、あのロニー博士だった。

 いまやロンドンは無政府状態となった。阿鼻叫喚の街の上空に、何と火星人の憎悪パワーが巨大化して立ち上るではないか。でっかくでっかくでっかくなって、そそり立つわしのナニ…って教授しっかりしてください!

 ロニー博士はそんな色ボケ教授に冷静に語った。あの巨大な精神パワーを倒すには、一つだけ方法があります。電気製品からアース線を引っ張るように、何かであの火星人パワーと地面とをつないで、パワーを逃がしてしまうんです。なにっ、つまり溜まりに貯まったモノを抜いてしまえと言うことだな…ってな感じで、教授はロニー博士の言ってることが分かってるんだか分かってないんだか。

 見ると巨大パワーのすぐそばには巨大クレーンがそびえ立っていた。勇敢にもクレーンによじ登っていくロニー博士。そうはさせじと例のバーバラが精神パワーでジャマをするが、彼女は俺の担当とばかりにクォーターマス教授が羽交いじめ。ついでに彼女の胸に触りまくり。バーバラくん、バーバラくんっ、わしは前から君のことがっ。あれえっナニをなさるの教授っ。頼むっ、わしを助けると思って一回だけ、一回だけでいいからっ。

 いや〜ん!

 彼女が気絶した隙に、ロニー博士はクレーンに乗って火星人巨大パワーのど真ん中に突っ込んだ。

 どっか〜ん!

 大爆発。クレーンは丸焼けでぶっ倒れた。火星人パワーはあとかたもなく消え去った。あとには放心状態になった教授とバーバラが残された。呆然とする教授は、静かにつぶやくのであった。

 もったいない。不覚にもパンツにもらしちゃった…。

 

 この作品、「原子人間」に始まるクォーターマス教授シリーズの三作目。イギリスはハマー・フィルムの製作と聞けば、そのテイストがお分かりいただけるだろうか? ハマー・フィルムはもちろんクリストファー・リーを一躍スターにした「ドラキュラ」ものなど、一連のホラー映画で知られている。この会社のつくるSF作品も、当然のごとくSF+ホラー風味の味付けなんだね。

 このハマー・フィルムの比較的最近のSF作品が「スペース・バンパイア」だと言ったら、その雰囲気を何となくつかんでいただけるんじゃないか。今回改めてこの「火星人〜」を見てみたら、そのストーリー展開が何とも似通っているのに気づかされた。特に後半の話の広がり具合なんかクリソツ(笑)。ワンパターンと言ってもいい。

 実はこの映画、僕が小学校の5〜6年生の頃に、テレビで一回見たんだね(その時のタイトルは確か「火星人地球大襲だと記憶していて、これはたぶん間違いないだろうと自信があるのだが、モノの本やらネットなどではなぜか「火星人地球大襲と表記している。ここでは一般的な表記に習って「火星人地球大襲とさせてもらった)。その時の印象ったら強烈そのもの。今回改めてイギリス版の輸入物DVDで見直してみたが、やっぱりかなりの面白さだ。それに街角のセットをまるごとつくったりして、なかなかの大作でもある。

 何より人類の脅威となるのが、火星人の憎悪の想念のパワーだというところが、あのSF古典名作「禁断の惑星」を思わせる壮大なテーマではないか。そういったスケールの大きさ、物語の語り口の巧みさはやっぱりさすがの出来だった。僕が子供の頃に受けた衝撃は本物だったんだね。

 開封されて外気に触れた宇宙船内部がたちまち風化していく描写の丁重さといい、凝ったディティールもうれしい、SFホラー映画の傑作と断言させてもらいたい。もしテレビか何かで見る機会があったら、ぜひご覧アレ。

 


Quatermass and the Pit

(米国公開題名 Five Million Years to Earth)

(1967年・イギリス)ハマー・フィルム・プロダクション制作

日本劇場未公開/テレビ放映(1971年)のみ

監督:ロイ・ワード・ベイカー

制作:アンソニー・ネルソン=キーズ

脚本:ナイジェル・ニール

出演:ジェームズ・ドナルド(人類学者ロニー博士)、アンドリュー・カー(クォーターマス教授)、バーバラ・シェリー(バーバラ)、ジュリアン・グローバー

2001年9月8日・輸入DVDにて鑑賞


 

 

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