「007は二度死ぬ」

  You Only Live Twice

 ロング・バージョン

 (2002/08/12)


 

手早く結論知りたい人はこちら

 

 

ボンドのジパング大冒険

 ここは地球大気圏外。アメリカの打ち上げた二人乗り宇宙船が衛星軌道に乗ったところ。片方の宇宙飛行士が船外活動に出たその時、ハワイのレーダーが宇宙船に近づく未確認飛行物体を確認した。みるみるうちに宇宙船の後方に異常接近してきたその物体は、ギラギラとメタリックに輝く巨大なロケットだ。しかもその先端が大きく開いて、まるで口を開いた「ジョーズ」のサメのような状態で宇宙船を飲み込んだではないか。その際にちょうど船外活動をしていた飛行士は命綱を切られ、哀れ宇宙の藻屑となって漆黒の虚空に消えて行った。

 「こちらヒューストン、応答願います!」

 しかしハワイもヒューストンも、宇宙船の消息を知ることはなかった。

 当然のことながらこれは大きな国際問題となった。某所で開かれた秘密会議では、超大国の代表同士が激しく暗闘した。特に宇宙船をさらわれたアメリカの憤りは激しい。この国はよその国の住宅に戦闘機を墜落させて人を殺しても、よその国の船を潜水艦でひっくり返して人を殺しても、よその国のスキー場のロープウェイをひっくり返して人を殺しても、よその国の大使館や軍事施設でもない場所を誤爆して人を殺しても、ロクに謝ったためしがない。それなのにテメエがちょっとでもやられたら大声でギャーギャー騒ぐのが悪いクセ。今度も大した証拠もないのにソ連が悪いと決めつけ、すわ戦争だとわめき散らす。株価が落ちたのも何もかも俺たちじゃなくて人のせいだ、だから大嫌いなアラブ人をやっつけてやる俺はブッシュだ!…と、ほとんど酔っ払ったゴロツキ状態。これに対してソ連は、身に覚えがないと完全否定だ。

 だが、英国紳士は慌てず騒がず。まったくたかだか建国200年ちょいくらいのガキの国がうるさいことよと思いながら、穏やかに増長アメリカンとボンクラ二代目ブッシュをたしなめた。これはソ連の仕業ではありませんぞ。現に謎の飛行物体はシンガポールから日本の方向に消えて行った。わが国ではすでにこの方面に調査を進めており、調査員が体を張って調査中です。

 その通り。まさに体を張っていた。

 ボワ〜ンとドラが鳴る。ドラが鳴ったら映画じゃ舞台は東洋と決まってる。ここは香港。ところがせっかくの100万ドルの夜景も見ようとせずに、ベッドに女とシケこむ男が一人。英国が今回の大事件の調査を託した男…ご存じジェームズ・ボンド=007<ダブル・オー・セブン>ことショーン・コネリー、殺しのライセンスを持つ諜報部員だ。どれどれチャイナ娘の味見をするかな? いやん、シャチョーさんシケベね…とか何とか言って乳繰り合って、すっかり油断しっぱなしのボンド。ところがチャイナ娘があるボタンを押すと、ベッドがボンドを横たえたまま壁に折り畳んで収納されてしまう。そこにいきなり部屋に飛び込んできた怪しい賊が数名。ベッドが折り畳まれた壁に向かってマシンガンを激しく発砲して、そのまま素早くその場を立ち去った。

 後から部屋にやってきた香港警察の警官が壁からベッドを引っぱり出すと、ボンド=コネリーが息絶えて横たわっていた。何と、映画が始まって10分も経ってないのに、ボンドは死んでしまったのか?

 蛇の目傘と活火山から流れる溶岩のイメージ。そこにダブる東洋人の女たち…。みなさま、二年間のご無沙汰でした。007シリーズのお時間がやってまいりました。司会はわたくし玉置宏。では「にくい貴方」で大ヒットを飛ばしたナンシー・シナトラがお色気たっぷりに歌います。曲はもちろんジョン・バリー作曲「007は二度死ぬ」!

 “ゆ〜〜〜〜おぉんりぃ〜〜りぶとわぁぁ〜〜〜いす…”

 さて、そんなナンシー・シナトラのこってりした歌声が流れている間、天下無敵のスパイ=ジェームズ・ボンドの弔いの準備が着々と進められていた。洋上の英国海軍の戦艦上で営まれた葬儀。何と僕も知らなかったが、ボンドは英国海軍中佐だったのだ。海軍の礼服に身を包んだままビニールシートにくるまれて、海中に葬られたボンド。

 だが海底に沈んだボンドの亡骸に、何者かが近づいてきた。アクアラングをつけたその男たちは、ボンドの亡骸をある潜水艦内に回収する。亡骸をくるんだビニールシートをはずしてみると、何とボンド=コネリーは酸素ボンベを付けて生きているではないか…当り前だけど(笑)。

 潜水艦内にはあのミス・マネペニーことロイス・マクスウェルやら、ボンドの上司Mことバーナード・リーも出張してきていた。さよう。今回の事件はまことに大事件。それも地球の将来に関わる重大事件なのだ。あとしばらくすればソ連が宇宙船を打ち上げる。さらには再びアメリカの宇宙船の打ち上げも控えている。ここで何かあったら大戦争に結び付きかねない。あのボンクラ二代目ブッシュなら、どんなアホなこともやりかねない。いまだ鼻たれのジャリのアメリカの尻ぬぐいをしなくてはならんとは苦々しい限りだが、わが大英帝国以外それを出来る者はいないのだ。ダイエー帝国は福岡で沈没したが(笑)。そうなりゃ英国が誇るオースティン・パワーズかボンドの出番だ。

 で、とにかく何だか分からないけど日本が怪しい(笑)。

 幸いボンド=コネリーは死んだことになっているので、今なら行動は自由だ。とにかく日本に潜入して、そこで事情通のガイジン(笑)であるチャールズ・グレイと接触することになった。合い言葉は「アイ・ラブ・ユー」。

 魚雷の代わりに潜水艦から発射されたボンド=コネリーは、何だかやたら島々が点在する夕暮れの海岸に漂着。あれはどう見ても瀬戸内海じゃないかと思っていると…。

 なぜかたちまちネオンまたたく銀座の街を颯爽と濶歩するボンド=コネリー。あの海岸から歩いて着いたのだろうか? 先ほどが夕暮れ、今は夜。これが一日後というわけでなく同日だとすると、ボンド=コネリーの移動スピードは異常に早い。もちろんケンブリッジで日本語は完璧にマスターしているから危なげがない。

 そんなボンド=コネリーが銀ブラ(筆者注:銀座をブラつくことを昔はこう言った。)とシャレこんでいる背後から、監視するようにつけてくる謎の和服の女。 手に持った和装ハンドバッグを開けて、中に仕込んだ高性能マイクにボンドの行動を逐一報告だ。

 やがてボンド=コネリーは蔵前国技館へ。なぜか力士の控え室にズカズカ上がり込むと、力士のサダノヤマがお出迎え。枡席にお呼ばれして優雅に相撲観戦とシャレこんだ。この体格と鍛え方ではとてもアメフトは無理と、若乃花の転身についてボンド=コネリーが思いを馳せているところ、隣の席に現れたのは謎の美女=若林映子。合い言葉「アイ・ラブ・ユー」で味方と判断して、彼女の後についていくことになったものの、こりゃ果たして合い言葉だったんだろうか? 結構本音だったりしてね…とほくそ笑むボンド=コネリーだった。彼女の白いトヨタ2000GTに乗って、連れて行かれたのは例の事情通チャールズ・グレイの和洋折衷のお屋敷。ここで意見交換して今後どうするか決めようとした矢先、グレイは障子の裏からナイフに刺されて絶命だ。どう考えても怪しいコートにマスクの男が逃げていく。さすがボンド=コネリーはそいつを一気に片づけると、どうもこの賊の相棒らしき男が車で待機しているではないか。ボンド=コネリーは慌てず騒がず、賊のコートとマスクを拝借してこいつになりすまし、相棒の車に乗り込んだ。やって来たのはホテル・ニューオータニならぬ大企業・大里化学の本社ビルだ。

 ビル内に入り込むと、さっきの賊の相棒が正体に気づいて襲ってくる。これも朝飯前で片づけるボンド=コネリーは、余裕でホームバーの酒を頂戴すると、秘密金庫に隠した書類を当てずっぽうで盗み出す。何者かの侵入に気づいた警備員が駆けつけても、これまた余裕の大立ち回りだ。さすがボンド。高温多湿の日本でも汗一つかかずに大里ビルから逃げ出すと、なぜか待ちかまえているかのように若林のトヨタ2000GTが玄関前で待ちかまえていた。

 「早く乗って!」

 俺も早くキミに乗りたい…とセクハラ発言をしたかどうか。とにかくボンド=コネリーは彼女の車に乗って危機脱出。だが、男性上位主義者のボンドーコネリーとしては、もうこれ以上女の言いなりにはなれない。どういうことだか説明しろと彼女に迫ると、なぜか若林は車を停めて、近くのビルの地下に逃げ込んだ。その彼女を追って地下通路を走っていくと…。

 ガッタ〜ン!

 床が抜けてボンド=コネリーは滑り台に落っこちる。ひゃ〜どこまで落ちるんだ?

 落ちたところには、これまたおあつらえ向きに椅子が置いてあった。何もなかったかのように、椅子に座っているボンド=コネリー。

 「ウェルカム・トゥ・ジャパン、ミスター・ボンド。霊界にようこそ」

 ありゃ? 変なところに来たぞと思いきや、出迎えたのはタイガー田中こと丹波哲郎、日本の秘密機関キーハンターのボスだ。だが野際陽子はいないし、アム〜ルと唄う変な歌も聞こえてこない。

 さて、霊界に通じる丹波は話は早い。早速ボンド=コネリーを連れて自分のお召し列車である地下鉄・丸の内線に乗って仕事の話だ。例のボンド=コネリーが当てずっぽうでかっぱらってきた書類は、大里化学の発注書。何と大量のロケット燃料を購入しているではないか。しかも、そこに都合良く添付されていたマイクロ・フィルムを拡大映写してみると、何やら田舎の港に貨物船が横付けされている。そこに海女も泳いでいるという、何ともミスマッチな写真だ。貨物船の船体には上海船籍の「ニンポー」号と書いてあった。一体こりゃどこの船だ(笑)。丹波の指令が飛ぶ。

 「貨物船ニンポーを洗え!」

 ここは男性天国の日本だ。何せここは何でも男が先、女が後だ。もちろんイクのも男が先。もっとも日本の男はみんな早漏だからな、わっははは!…ってまるで自慢にならない。ボンド=コネリーと丹波は美女たちの接待を受けて、大いに疲れを癒したのは言うまでもない。ただしボンド=コネリーの元には若林がやって来たので、疲れを癒すどころか余計に疲れたかもしれないが。

 さて後日、ボンド=コネリーはビジネスマンに化けて大里化学ビルにやって来た。大里社長こと島田テルがお出迎え。社長秘書はパツキン美女のカリン・ドール。ううむ、寝てみたい。そんな妄想にふけったあげく、わざわざ出かけた割には大した商談もしないで帰ったボンド=コネリーだが、相手はX線でボンドが銃を携帯した怪しいヤツと悟っていた。何だかわざわざ自分が怪しいと知らせに行ったような感じだが、そこはプロのボンド=コネリーだ、まさか何の考えもなかったわけはあるまい。だが何で行ったのかは映画の最後まで見ても分からない(笑)。やはりプロの考えることは余人には伺い知れないものがあるわい。

 その頃、丹波の元には指令の答えが届けられていた。「ニンポー」は今、神戸にいると言う。早速若林と共に神戸に向かうボンド=コネリー。彼は神戸が東京からどれくらい離れているのか知っているのか?

 とにかく若林とボンド=コネリーは神戸に着いた。港で荷の積み卸しを行っているニンポー。案の定、ロケット燃料もあった。ところがボンド=コネリーと若林は、いつの間にかショボくれた港湾労働者たちに取り巻かれていた。若林を逃がしたボンド=コネリーは、港湾労働者たちを一手に引き受けた。世界最高のスパイが港の汚ねえアンチャンたちと勇ましくも大奮闘。ボンド40年の歴史でも、彼がこんなに冴えない敵とサシで勝負したことなんてなかったんじゃないか? そのせいで張り合いもなかったせいか、ボンド=コネリーはアッサリ捕まった。

 待ちかまえていたのは例の大里社長秘書のカリン・ドール。うう〜ん、キミをラブ・ドールと呼んでいいかい? いいわよぉ、秘密を教えてくれたらネ。実は僕は産業スパイなんだ、金を儲けてキミと山分けはどうだい? さすがボンド=コネリー、オスのフェロモンでたちまち商談成立だ。

 では二人でセスナでお出かけ…と思ったら、飛行中にパイロットの彼女はセスナから脱出しようとする。あれっ、二人でシッポリ…じゃなかったの? ごめんあそばせ、一人で昇天してねん。ドールはパラシュートで脱出。ボンド=コネリーは後部座席にいつの間にか固定板で押さえつけられ身動き出来ない。お〜い、俺ひとりでコイてろってことかよ〜。ナニのことになると欲望人一倍のボンド=コネリー。こうなると股間の小ボンドが黙っていない。下っ腹に力がみなぎって思い切りカマ首をもたげたもんだから、固定板もたまらずバリンと割れた。これぞ男の武器だわい。間一髪でセスナを不時着させて、何とか事なきを得た。

 何だか分からないけどまた助かったボンド=コネリー。その頃、「ニンポー」の方は調べがついていた。神戸と上海間を往復する「ニンポー」だが、両方の港で撮影した写真では、船の沈みかたが微妙に違う。どこかで荷を下ろしたに違いない。それは神戸と上海の間にある島、マツ島だ!…って、あ〜た、神戸と上海ってどのくらい離れてるのか分かってるのか(笑)。一体どういう地理になっているのだボンド・ワールドは。すると、今度はボンド=コネリーが指令を出した。

 「英国からリトル・ネリーとお父ちゃんを呼べ!」

 汗をかきかきやって来たのはボンド=コネリーと古いつき合いのQことデズモンド・リューウェリン。何で俺が日本くんだりまで来なけりゃならないんだとボヤくQちゃんに、ボンド=コネリーは日本流の男性天国のおもてなしをすると約束して、早速リトル・ネリーをご披露とあいなった。そのリトル・ネリーとは組立式超小型ヘリコプターのこと。こんな華奢なシロモノなら、俺のヘリを使えばいいのに…と不満げな丹波だったが、ボンド=コネリーはいいからいいからと勝手にリトル・ネリーに乗り込んだ。めざすは疑惑の島、マツ島だ。

 マツ島上空を飛ぶボンド=コネリーは、あちこち偵察してみるが何も怪しいものを見つけられない。せいぜいあるのは火口が湖になった巨大な火山だけ。こりゃ収穫なしかと帰ろうとした矢先…。

 来た来た、おいでなすった謎のヘリ軍団。

 ちっぽけなリトル・ネリーに襲いかかるヘリ軍団だが、この小型ヘリちょっとただのヘリとはモノが違う。爆弾投下、マシンガン掃射、ロケット弾発射…と、たちまち敵ヘリ軍団を難なく撃退。こりゃ朝飯前ならぬ夕飯前だぜ。さぁて帰って旅館の海の幸でも食うかとボンド=コネリーが報告すると、丹波はまだ帰るなとつれないご返事。実は今度はソ連の宇宙船が発射されるというのだ。

 なぜかヒューストンみたいに熱帯植物が生えている発射場から、ソ連のロケットが発射。早速地球の周回軌道に乗ったその時…。

 出ました出ました、お約束の巨大ロケット。慌てるソ連宇宙飛行士をよそに、またまた頭からパックンチョだ。

 そして案の定、巨大ロケットはマツ島に降下していった。ここのどこかに基地があるのは間違いない。

 その頃、タイガー丹波の秘密組織はマツ島攻撃のための準備を着々と進めていた。忍者軍団が姫路城周辺で白昼堂々炎天下でトップ・シークレットの訓練を繰り返している様子を、目を細めながら見つめる丹波。その忍者たちの勇ましさと真っ昼間からあまりに厳重な機密ぶりに思わず驚くボンド=コネリー。おまけにさすが忍者を前にして礼を失してはならないと、丹波は紋付き袴、若林も晴れ着と、すっかり新春隠し芸大会体制が整っているのにボンド=コネリーは二度死ぬならぬ二度ビックリ。おまけに丹波は何を血迷ったか、ボンド=コネリーにも日本人になってマツ島に潜入しろとのご命令だ。何ですかそれ? 俺にJリーガーみたいに「凡土」とか名乗れって言うの?

 違う、肉体から日本人の男になるのだ。まずその胸毛を剃れ、ついでにナニを包茎にしろ、ただし仮性包茎でいい、そしてカツラも取れコネリー!

 さらに日本の女を嫁にとれ! 不細工な女でも文句を言うな。大根足でもズン胴でも文句を言うな、どいつもこいつも横並びで同じような流行りの格好して喜んでいても文句を言うな、外ヅラばかり良くて内ヅラ最悪でも文句を言うな、それが日本の女というものだ! 男性天国なのも一人モノのうち、嫁をもらったら状況は180度変わるぞ。

 とにかく日本の男となったボンド=コネリー。それでも夜には若林が夜這いをかけてくるので大喜び。ところが夜中に若林は、天井から賊に仕込まれた毒で世を去った。うわ〜ん、俺の日本での楽しみがなくなったよ〜。

 そこに日本女と夫婦にならねばならないからボンド=コネリーは気が重い。ところが所帯を持つ事になった女がイケてるボディーの浜美枝と知って、なぜか胸ときめくボンド=コネリーだから現金だ。麦ワラ帽子にラクダのダボシャツで、トホホなスタイルに身を包んだボンド=コネリー。浜と夫婦になってマツ島近くの漁村に乗り込んだが、着いて早々に葬式がお出迎え。実は浜はこの島の海女だった。その海女仲間の一人がマツ島で謎の死を遂げたというのだ。

 おまけにアメリカが宇宙船の打ち上げを早めたため、もはや一刻の猶予もなくなった。アメリカのブッシュはそれでなくても戦争やりたくてウズウズしてるから、何かちょっとでも不都合あったらソ連に向けて先制攻撃をやる気十分だ。

 ただちにマツ島を調べなくては。翌朝、漁師夫婦に化けたボンド=コネリーと浜は、船を漕ぎ漕ぎマツ島まで向かった。めざすは浜の海女仲間が死んだマツ島の洞窟。行ってみると海女が死んだ理由はすぐに分かった。洞窟に有毒ガスが充満しているのだ。中に人が入って行けないように用心しているに違いない。ますますマツ島は怪しいって今頃そんなこと確信したのかと、傍で見ていてちょっと心細くなってくるボンド=コネリーだが、とにかく浜と二人で火口まで行ってみようということになる。

 火口まで歩いている間も、浜のイケてるビキニ姿が目の保養のボンド=コネリー。またしても股間の小ボンドがカマ首もたげて歩きにくいったらない。ちょっと休んでいかないか?…とラブホでも連れ込む常套句を口にするボンド=コネリーに、もちろんその気になってきた浜も異存がない。

 アウトドアのナニは興奮するなぁ…とイチャついていると、どこからともなくヘリコプターが飛んでくる。こんな状態で仕事のことを覚えていたとか奇跡的だが、ボンド=コネリーは女の体をまさぐりながらも、ヘリが火口に降りていくのを見逃さなかった。

 何と、火口の湖がぱっくり割れて空洞が顔を覗かせた。ヘリが降りていったそこは、巨大な秘密基地ではないか!

 とりあえず暗くなるまで待とう。それまでは浜とよろしくやっていようと重大な決意をするボンド=コネリーだった。

 楽しいことをやっていると時間はすぐに経つもんだ。暗くなって火口を降りていったボンド=コネリーは、湖が金属製の巨大な扉であることを突き止めた。浜は慌てて忍者部隊の応援を頼みに駆けだした。ボンド=コネリーはまたしてもヘリ発信時に火口の扉が開いたのに乗じて、チャッカリ秘密基地に忍び込んだ。

 秘密基地には発射台があり、そこには例の巨大ロケットがど〜んと鎮座していた。基地には悪党どもが雁首を揃えていたのは言うまでもない。大里社長もそこにはいたが、なぜかある人物にペコペコ。日本の大企業の社長ともあろう者がペコペコする相手とは誰だ? カルロス・ゴーンか? その男はネコをなでなでしながら辺りを威嚇していた。この基地での作戦を指揮しているのもこの人物だ。「日本企業は実力主義でないから国際競争力がない。もっとリストラを断行しろ!」

 一方、ボンド=コネリーはロケットに乗り込もうとしていた飛行士をやっつけ、宇宙服を奪い取って飛行士になりすました。そしてロケットに乗り込もうとしたその時…。

 「あの飛行士もリストラしろ!」

 モニター・テレビで見つめていた例のカルロス・ゴーンもどきの人物の再建計画が飛んだ。周囲の日本人の役員はひえ〜とまた怯えた。飛行士になりすましたボンド=コネリーは、その人物の前に連れて来られた。

 「ようこそボンド君。お目にかかれて嬉しいよ」

 それはボンドが戦ってきた中でも最強の敵。国際犯罪組織ルノー(笑)…じゃなくてスペクターの大物、プロフェルドことドナルド・プレザンスだった。ここで我々と一緒にわがフェアレディZ号が発射されるのを見てくれたまえ。

 ボンド=コネリーの奮闘むなしくロケットは発射された。アメリカの宇宙船は風前の灯だ。アメリカではブッシュが核ミサイルのボタンを押したくてウズウズ。さぁ、ボンドはどう出る? 果たしてロケットによる宇宙船襲撃を阻止できるか? バカなどこかのボンクラ二代目大統領を思いとどまらせて、最終戦争を回避することが出来るのだろうか?

 

東洋趣味も時代錯誤も飛び越えた不思議世界 

 ジェームズ・ボンド=007シリーズ(これ、わが国では「ゼロゼロセブン」と読んでいたのが、最近では「ダブルオーセブン」と英語での読み方になってきたね)の5作目。この作品でショーン・コネリーがボンド役から降板(実際には「ダイアモンドは永遠に」で復帰し、後には番外編「ネバーセイ・ネバーアゲイン」にも出演したが)することになり、その記者会見がロケ先の日本で行われて大騒ぎになったとか。

 この映画を見るのは実は今回が初めてではない。テレビでは何度も見ている。実は僕が一番好きなボンド映画だ。DVDを手に入れたこともあって、全編ノー・カット吹き替えなしで見てみたくなったわけ。

 でも何でこれが「SF映画秘宝館」に収録されるのか…と怪訝に思われるムキも少なくないだろう。まぁ、ここでの「SF映画」って定義はいいかげんだからねぇ。

 まずはボンド・シリーズの中でSFテイストが「ムーンレイカー」と並んで最も高い映画だということは指摘できるだろう。ボンドが本当に宇宙に飛び出す「ムーンレイカー」は、やはり「スター・ウォーズ」大ヒット直後という映画界の状況が反映したもの。そういう意味では、それに先立つ12年前にこれだけ宇宙開発を絡ませた話を展開させているのに驚かされる。

 だが、何と言ってもスゴイのが日本を舞台にしているという点だ(笑)。ここで描かれる1960年代の日本というのが、とにかくもの凄いのである(笑)。これが単純に過剰なオリエンタル・ムードや時代錯誤が充満しているなら、日本人として見ていて怒ってしまう人も出てくるかもしれない。だがここに出てくる日本は、実は「日本」ではない。オリエンタル・ムードもここまでいくともう東洋趣味ではない、時代錯誤もここまでいくとどこの時代にも存在しない。これはもうファンタジーだ。

 そう言えばナンシー・シナトラの主題歌はとっても美しくて、だけどかなり歌いにくそう。DVDの音声解説でも、実際にナンシー・シナトラ自身がスタジオで不安を感じたことを告白している。それというのもいわゆる西洋モダンムード歌謡(笑)ふうのサウンドに東洋趣味をちょっと混ぜながら、あくまでそれも味付けにとどめたかなりギリギリ際どいラインを狙っているから。エレキギターなんかも効果的に使われているしね。聞いていても不思議なムードになってくる、何とも形容しがたい歌なのだ。このテイストこそ、今回の「二度死ぬ」の世界そのものなんだよね。

 一応国際紛争が背景にあって、英国の諜報部員が日本にやって来る。そんな現実的味付けがなされているにも関わらず、どこか地球以外の惑星の出来事にしか思えない。この不思議な感覚。だから、今回「SF映画秘宝館」にあえて収録したんだね。

 そんなわけでこの映画、いわゆるセンス・オブ・ワンダーに満ちている。その功労者の一人は、脚本を担当した作家のロアルド・ダールだろう。彼の豊かなイマジネーションこそが、この作品がリアルな日本から遠くはずれていても愚作に見えない理由だ。日本人が見てもこれに腹を立てることもなく不快感も持たずに、空想の世界を遊べるというのは並大抵のイマジネーションじゃない。そういう意味で言えば、この作品は映画史にも希な作品かもしれない。いわゆるボンド映画であり、大人のエンターテインメントであり、東洋趣味の映画であり、何よりもSFとファンタジーのテイストに満ちている映画なのだから。

 そして監督にはこれもボンド映画初登板のルイス・ギルバート。マイケル・ケインの出世作「アルフィー」のヒットで注目されての起用ということだが、彼も含めてここでプロデューサーのアルバート・R・ブロッコリとハリー・サルツマンの二人は、ボンド映画に新風を吹き込もうと新たな人材を多く登用している(「アラビアのロレンス」などデビッド・リーン組の撮影監督フレディ・ヤングの起用も斬新だ)。それがこの映画を、異色の「ボンド映画」にしているのだろう。

 なおルイス・ギルバートはこの後にもボンド映画を2本撮っているが、それが「私が愛したスパイ」と「ムーンレイカー」であるのは興味深い。どちらもSFとファンタジーのテイストが強く、前者はお話自体が「二度死ぬ」とほぼ同じで舞台を海に持ってきただけ、後者が「二度死ぬ」に出てきた宇宙への再挑戦だ。この人がやりたかったことって、ボンドの大人のおとぎ話の面をさらに推し進めることだったんだろうな。そういや、この人の作品歴にはあの「フレンズ」ってのもあったっけ。僕らはまだ青い盛りのお年頃だったからアニセー・アルビナのヌードに目が釘付けになっちゃったけど、実はあれも考えてみれば「愛のおとぎ話」だもんねぇ。しかもこのギルバートって人、英国皇太子がお忍びで日本に来て日本娘と恋仲になる…という逆「ローマの休日」物語、マイケル・ヨーク主演の「日本での五夜」って映画も後に撮ったはずだ。これはさすがに時代錯誤も甚だしすぎたか日本公開は見送られているけど、とにかくこの人の姿勢は一貫してるよね。

 だから、ボンドが日本に潜入してから丹波哲郎の秘密組織と遭遇するまでの、回りくどいやり方を文句言ってはいけない。何で和装の美女が何人もゾロゾロ出てきてボンドの足取りを報告するのか。しかもボンドはわざわざ蔵前国技館まで行って力士の控え室に乗り込み、力士直々に枡席のチケットをもらって、座って相撲観戦しているところにようやく若林映子が現れる。ここまでの段取りの面倒くささ…だが、これはそういった凡百のアクション映画とは違う。やたらに派手にブチかましたりスピードアップすればいいというものではない。これはボンド映画なのだ。見知らぬ世界に迷い込んで戦う無敵のヒーローの話を楽しむ、現代の大人のおとぎ話なのだ。そういうボンド・シリーズの本質を見事に見破った、ロアルド・ダールとルイス・ギルバートはただ者ではないね。

 で、これが現実とは完全に切れた「おとぎ話」やファンタジーということになれば、何でもありってことなんだよね。

 この日本描写のオカシサは、実際にオリエンタル・ムードや時代錯誤ってレベルだけじゃない。例えばホテル・ニューオータニ=大里化学本社ビル直前から始まったカー・チェイスを例に取ってみよう。当然都心を走っていたクルマだが、上空から丹波組織のヘリが飛んできて磁石で敵のクルマを吊り上げてしまう(!)。これだけでもSFと断言していいと思うけど、問題はこのヘリが飛んできたあたりの風景。どう見ても多摩ニュータウンあたりのまだ宅地造成をしたかしないかの場所って感じなのだ。で、吊り上げられたクルマが上空から放り出されるのは東京湾…。どうなってるのだこれは(笑)。

 でも僕らは知らないだけで、ボンド映画ってずっとこんな調子なのかもしれないのだ。それがバハマだろうとアメリカ南部だろうとラスベガスだろうと、おそらくこのいい加減さなのではないか。例えば「ゴールデンアイ」に登場した巨大なパラボラ・アンテナ。あれは現実にプエルトリコに存在する山の谷間を利用して建設した固定パラボラ・アンテナを、架空のものとして使っているんだよね。ホテル・ニューオータニが大里化学本社ビルというのと、まったく考え方が変わってないのだ。

 そして今回僕が見てて嬉しかったのが、若林映子がボンドを丹波組織の本部におびき寄せるために入っていく地下道。あれって地下鉄の丸ノ内線の…それもおそらく方南町駅ではないか? 何となく駅の雰囲気が見覚えあるのだ。丸ノ内線でも中野坂上から本線と分かれる方南町〜中野富士見町のラインは後から出来たはずだから、ひょっとしたら1966〜7年当時はまだ開通前だったのかもしれない。あるいはそんな分線したラインだから終電が早いか運行の停止がラクだとか…おそらくそんな理由で撮影場所に選ばれたのではないか? その後、組織のボス丹波が乗る移動司令室として、モロに赤いボディーの丸ノ内線の車両が登場するので、この撮影現場=方南町駅説はかなり確証のあるものだと思う。余談だが、僕は子供の頃からこの丸ノ内線を使っているので、ここのシーンは無条件に嬉しかった(笑)。

 また、敵の秘密基地って最初は海岸近くの日本の城に建設されている設定だったらしい。それって原作通りとのことだが、イアン・フレミングって日本まで取材に来て何を調べたんだろうね(笑)? ブロッコリ、ダール、ギルバートらスタッフは何日間も日本上空をヘリで飛んだあげく、台風に毎年襲われる日本では海岸近くに城はない…との結論に達したとか。いや〜、そんな理由があるとは日本人の僕も知らなかった。そういやそうだね(笑)。

 そこでプロデューサーのブロッコリが火山性の島の集まりである日本だから、火山を秘密基地にしようと思い立ったわけ。これは大英断だったと思うよ。この決断はセンスを感じさせる。

 結果、ロンドン近郊のパインウッド撮影所に敵の秘密基地の巨大セットが建造されたけど、これが今見てもすごいもんだね。実際にヘリが離着陸出来て、巨大な原寸大のロケットが発射できる(もちろんワイヤーでつり下げてはいるだろうけど)。模型と平行して使用されてはいるだろうが、とにかくこのスケール感はすごいよ。

 というわけで、オリエンタル・ムードで時代錯誤という概念まで飛び越え、とっくの昔にアナクロの域も脱して別の世界を構築してしまっている「二度死ぬ」。これを見てあまりの男性天国ぶりに怒るフェミニスト女がいたら、そりゃ頭を医者に診てもらったほうがいい。これは別の惑星での出来事なんだから。それも「不思議惑星・銀座・ザ」っていう惑星のね(笑)。

 


You Only Live Twice

(1967年・イギリス)イオン・プロダクション製作、ユナイテッド・アーティスツ映画配給

監督:ルイス・ギルバート

脚本:ロアルド・ダール

製作:アルバート・R・ブロッコリ、ハリー・サルツマン

出演:ショーン・コネリー、丹波哲郎、浜美枝、若林映子、ドナルド・プレザンス、島田テル、カリン・ドール、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル、デズモンド・リューウェリン、チャールズ・グレイ

2002年8月8日・DVDにて鑑賞


 

 

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