「知られざる島」

  Unknown Island

 (2005/09/26)


 シンガポールの怪しげな酒場。その喧噪の中に、全く場違いなアメリカ人男女がやって来る。その二人…テッド(フィリップ・リード)と婚約者のキャロル(バージニア・グレイ)は、タルノウスキー船長(バートン・マクレーン)なる人物を訪ねてここまでやって来た。当のタルノウスキー船長は長年の片腕サンダーソン(リチャード・ベッセル)と共に、奥で飲んだくれている最中。この二人の突然の来訪に驚いたのは言うまでもないが、特にキャロルの「いい女」っぷりに感嘆しきりだ。

 テッドとキャロルの持ちかけた話は、南海のある島に船を出して欲しいとのこと。金に糸目をつけなそうな様子から、商売柄ヤバイ橋も何度も渡って来たタルノウスキー船長は、この話にも何やら大きな声では言えない気配を察知した。するってえと、航海の目的は…? どうやら非常に貴重な野生動物に関する事のようだが…。

 「野生動物…確かにそうだが、もう何万年も前に死に絶えた生き物でね」

 「するってえと、そいつの骨でも持ち帰ろうってんで?」

 「いや、ヤツらは生きている。今でもね!」

 にわかには信じがたい話だが、テッドは本気だった。先の大戦中に飛行機で地図にない島を発見し、そこで古代の生物を目撃したと言うのだ。しかも彼は、飛行機から撮影した巨大生物らしき写真も持参していた。

 そうなると、話の成り行きは少々違ってくる。一同は酒場の奥の部屋へ移動だ。客をくわえこんでイチャつき真っ最中の女たちを追い出すと、さらに突っ込んだ「ビジネス」の話に入っていく。

 実はタルノウスキー船長、そうした恐竜たちの住む島のウワサはすでに耳にしていた。そこから命からがら生きて帰ったという男も知っていた。誰もそいつの言うことなど信じていなかったのだが、こうなるとそれは真実だったという事になる。ならばこの唯一の「目撃者」をガイドにするのが得策だ。

 こうして酒場の「奥の間」に、問題の男ジョン・フェアバンクス(リチャード・デニング)が呼ばれてくる。だが肝心のフェアバンクスは、酒浸りのヨレヨレ。例の島での恐怖の体験が、彼の心を蝕んでいたのだ。

 だからフェアバンクスは、「例の島」に行くと聞くや火がついたようにビビりまくる。あげく捨てゼリフを吐いて部屋を出ていく始末だ。「くたばった方がマシだ、あそこに戻るくらいならな!」

 だがタルノウスキー船長は、何とかしてフェアバンクスを確保すると自信満々だ。それよりもテッドとキャロルにこう念を押すのを忘れなかった。「ともかく金の方はしっかり頼みますぜ」

 こうして航海はスタート。テッドとキャロルは新婚旅行の予行演習みたいに喜んでいる。結局フェアバンクスも同行する事になり、覚悟を決めたのか酒もスッカリ抜けていた。タルノウスキー船長もゴキゲンだ。

 だが船長の片腕サンダーソンは、どうも様子が気に入らない。この船はタルノウスキー船長とサンダース、テッドとキャロルとフェアバンクスの他、何人かの白人の船員を除いては、シンガポールで雇ったマレー人のクルーたちを乗せている。だがこのクルーたちが何だかおかしい。いつもコソコソしゃべったり、こちらの様子を伺っているように見える。何か企んででもいるのだろうか?

 案の定、彼らは企んでいた。クルーたちはクルーたちで、怪物がウヨウヨする伝説の島の事はウワサで聞いていた。よせばいいのにそんな島にノコノコ行くなんでもっての他だ。ならば謀反を起こして船を乗っ取ってしまうしかない。

 かくして夜中にクルーは決起した。手持ちの刀で何人かの船員を殺し、たちまち船内を制圧したかに見えたが…そこは百戦錬磨のタルノウスキー船長とサンダーソン、アッという間に叛乱クルーたちを鎮圧。船室に閉じこめてしまった。だが、これからの旅にはどうしたって彼らの力が要る。そこであくまで罪は不問とする…とクルーたちに告げるタルノウスキー船長だった。

 さて不穏なムードなのはクルーだけじゃない。フェアバンクスには「物見遊山じゃねえぞ」という気持ちもあったのだろう、ハシャぎまくるテッドとキャロルを冷ややかな目で見ていた。それをあからさまにキャロルに告げてもいた。これに憤慨したキャロルは、フェアバンクスを臆病者扱い。二人の相性は最悪のように見えた。

 さて、ついに問題の島が見えてきた。双眼鏡で島を確認するタルノウスキー船長とサンダーソンは、そこに驚くなかれ首長竜たちがドテッと鎮座しているのを発見。自分も恐竜を見たがったテッドは、大慌てで双眼鏡を奪い取った。ところがテッドが見た時にはすでに首長竜の姿はいない。これには大人げなくもガキみたいに悔しがるテッドだ。

 「さぁ、すぐに上陸しよう!」

 双眼鏡で恐竜が見れなかった悔しさからか、やたら上陸したがるテッド。ともかく彼らは何人かの船員とクルーたちを伴って、ボートで島に接岸する。するとその砂浜には…。

 巨大な足跡だ!

 やっぱりこの島は、本当に恐竜の島だったのだ。彼らは用心しいしい森の中に入っていく。すると首長竜は出てくるわ、背ビレの大きな巨大トカゲ状の恐竜は出てくるわ、ともかく恐竜がいることいること。

 ともかく彼らはここで恐竜たちを観察するため、安全と思われる場所にキャンプを張った。そしてクルーの一人に水を汲みにやらせたのだが…。

 ギャァァァ〜〜〜!

 悲鳴に驚いて駆けつけてみると、クルーの男はティラノザウルス二頭に襲われて地面に倒れていた。そしてこいつをどうするかで二頭が睨み合った状態だ。キズを負った男は、二頭の間でもがき苦しんでいる。これはもう助かるまい。結局タルノウスキー船長たちは断腸の思いで男を射殺した。そんな一部始終を、必死にムービー・カメラで撮影するテッド。

 おまけにキャンプ近くの茂みからは、何者かが近づいてくる物音がする。思いっ切り気を持たせたあげくに出てきたのは、毛むくじゃらの巨大猿人。だがこのチューバッカみたいな猿人は、すぐに巨大トカゲに気をとられて去っていってしまった。

 やはりここは危険な島だ。こんな所でグズグズしていたら。みんなやられてしまう。だがあくまでテッドは満足できる写真を撮るまで動かない…と言い張って、今夜はここに留まる事になる。これにはフェアバンクスも憤慨するし、キャロルも不信感を募らせた。

 おまけにタルノウスキー船長はいきなりキャロルに襲いかかってくるから、もうタイヘン(笑)。

 果たして一行は、無事に恐竜の島から脱出できるのだろうか?

 

 驚いた事に、第二次大戦が終わって間もなくの1948年製作のSF映画。明らかにB級作品とは言え、逆に言うと弱小プロダクションがこんな映画をつくる余力がまるまるあった…という事からして、アメリカ相手に戦争なんかしても敵うわけなかった…と痛感させられる作品だ。

 スタッフ・キャストとも見覚えのない顔ぶれ。一応「主演者」のバージニア・グレイと、実質上の「ヒーロー」であるリチャード・デニングともどもB級一筋の役者さんらしい。グレイはキャリアの最期の頃に大作「大空港」(1970)なんて出演作もあるが、ビリングは下から数えた方が早いのは言うまでもない。代表作はサミュエル・フラーの「裸のキッス」(1964)あたりだろうか? リチャード・デニングもパッとしないフィルモグラフィーの持ち主だが、その中にあの黒い蠍(1957)の主演なんて仕事があったのには笑ってしまった。そう言えばこいつ出てたっけ。そして晩年は、もっぱらテレビ・シリーズ「ハワイ5-O」(1968〜1980)の脇のレギュラーで食いつないでいたらしい。

 ビックリしたのはこのグレイとデニング、よりによってクズSF映画標的は地球(1954・日本未公開)に二人とも主演していたこと。あれは「知られざる島」に次いでの再共演だったのか(笑)。あれに出てるようじゃ、役者人生もかなり暗い。

 ハッキリ言ってこの作品、制作費も安そうだ。奇妙なのは「シネ・カラー」と称する色彩効果を用いていることで、これはフィルムの事なのか現像方法なのかは知らないが、意外に鮮やかな色を今にとどめているから驚いた。他に「シネ・カラー」作品は存在するのだろうか?

 お話としては典型的「ロスト・ワールド」もの。何ら目新しいものはない。実はこの手の映画としては致命的な事に、特撮も実に貧弱だ。

 恐竜たちは模型と着ぐるみで処理。首長竜などはわずかに首を上下させるのがやっとで、背ビレの大きな巨大トカゲなどは四つ足が見えていながら全く動かず、完全に何かで「引きずられて」動いている事がアリアリと分かる(笑)。そもそもティラノ以外は、ヒョコヒョコ出てくるだけだから迫力もない。一番笑ったのは巨大な猿人で、出てくるまでさんざ気を持たせて引っ張っていながら、ようやくジャングルから姿を見せると大トカゲに気をとられて去っていってしまう。これには登場人物ともども見ているこっちもカクッと来た(笑)。

 だが何よりガックリ来るのが、この映画の狙いが完全にズレてるところだ。

 まずは冒頭のシンガポールの酒場の場面。全編たったの75分しかないこの映画なのに、そのうち20分ぐらいはこの酒場で費やされるのだ。確かに何とも怪しげな酒場で雰囲気は出てるものの、この映画でここに力を入れても仕方あるまい。

 しかも航海途中で無意味に叛乱がある。これに限らずこの映画の登場人物は、どいつもこいつもやたらに対立したりモメさせたりで不穏な動きばかり見せているのだ。まずはキャロルにフェアバンクスがイヤミを言い、キャロルはフェアバンクスを腰抜け扱い。島に上陸したらテッドは婚約者キャロルを放ったらかして写真三昧。まぁ、そりゃ恐竜を前にしたら…男としては女より恐竜だろうが(笑)、だが人が死んでいるのにムービー・カメラを夢中で回していたのはマズかった。これでフェアバンクスがテッドを非難。キャロルもテッドを非難。さらになぜかタルノウスキー船長はキャロルに襲いかかり、テッドが船長を威嚇。船長はこれを逆恨みしてか恐竜捕獲を宣言。そんなこんなでお仲間だったタルノウスキー船長とサンダースまでモメだす。クルーはまたしても叛乱を起こしてボートで逃げ出すが自滅…とまぁ、対立と裏切りのオンパレード。とどめのラストで、キャロルは婚約者テッドからフェアバンクスに鞍替えしてるというアリサマだ。

 結局、怖い怖いと言われる恐竜だが、ヤツらは大して人間に危害を加えていない。実は人間は人間同士で戦って自滅しているのだ。

 そういう意味では、まるでジョン・ヒューストン黄金(1948)みたいな世界が、恐竜の島で展開するお話と言えば分かりがいいかもしれない。確かに冒頭の怪しげな酒場も、ジョン・ヒューストン的と言えばジョン・ヒューストン的だ。しかもしかも、この「知られざる島」は「黄金」と同じ1948年の作品。確かにプロデューサーなり監督なり脚本家が「黄金」を見て、「アレに恐竜をプラスしたらイケる!」と突貫工事的につくった可能性はあるね。

 だが、そんなものをSF映画で…恐竜冒険活劇でキミは見たいか(笑)?

 しかもスタッフ・キャストとも「黄金」と比べては一段も二段も落ちるからねぇ。さほどの人間洞察があるわけでもない。むしろそんなところにムキ出しの人間の欲望出されても、恐竜の夢がしぼむだけ。

 作り手は本当にSFつくりかたったのだろうか? ナゾだ。

 


Unknown Island

(1948年・アメリカ)

アルバート・ジェイ・コーエン・プロダクションズINC. 製作

日本劇場未公開

監督:ジャック・バーンハード

製作:アルバート・J・コ−エン

脚色:ジャック・ハーベイ、ロバート・T・シャノン

原案:ロバート・T・シャノン

出演:バージニア・グレイ(キャロル・レーン)、フィリップ・リード(テッド・オズボーン)、リチャード・デニング(ジョン・フェアバンクス)、バートン・マクレーン(タルノウスキー船長)、リチャード・ベッセル(サンダーソン)、ダニエル・ホワイト(船員エドワーズ)、フィリップ・ナジール(船員ゴラブ)、レイ・コリガン(怪物)

2005年7月27日・DVDにて鑑賞


 

 

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