スケッチ その1
『死んだオウム(Dead Parrot)』
第1シリーズ8話より
出演
プラリーン(客)・・・ジョン・クリーズ
店主・・・マイケル・ペイリン
駅員・・・テリー・ジョーンズ
大佐・・・グレアム・チャップマン
マイケル・ペイリンの体験談を元に、グレアム・チャップマンが大胆な脚色を加えた、パイソンスケッチの中でも屈指の傑作です。

とあるペットショップ。鳥かごを手に入ってくる男が一人。店主はレジに隠れるようにこそこそとしている。(上の写真)
プラリーン「こんちは、苦情を言いに来たんだが」
店主「・・・・・・(隠れている)」
プラリーン「もしもし、彼女?」
店主「(思わず「すっ」と立ち上がり)は? 彼女って?」
プラリーン「・・・・・失敬、風邪を引いていてね。苦情を言いに来たんだ。こいつを返品したいんだがね」
プラリーンは鳥かごをカウンターに置く。
店主「今、昼休みでして・・・・」
プラリーン「いいから。30分ほど前にこの店で買ったオウムなんだが」
店主「ああ、ノルウェイ・ジャンブルーね。何か問題が?」
プラリーン「大ありだよ。死んでるぞ」
店主「・・・・いえいえ、これは寝てるんですよ」
プラリーン「寝てるか死んでるか見りゃ分かんだろよ! ほれ!」
鳥かごを差し上げるプラリーン。かごの中ではオウムが横たわっている。
店主「いえいえ、やっぱり寝てるだけです。おネンネしてるんですよ」
プラリーン「おネンネぇ?!」
店主「ええ、こいつは変わってまして。見て下さいこの美しい羽根!」
プラリーン「羽根のことなんかどうだっていいんだ! 死んでんだから!」
店主「い〜え、寝てるんですって」
プラリーン「・・・・・・よぉし、分かった。なら起きるんだな!」
プラリーンは鳥かごの扉を開いて口元に持ってくる。
プラリーン「(叫ぶ)おはよ〜ポリ〜!! おいしいイカがありますよ〜! 起きてくだちゃ〜い!」
店主がかごを小突いて揺らす。
店主「ほら、動いた」
プラリーン「何言ってやがる、お前が押したんだろ!!」
店主「何にもしてませんよ!」
プラリーン「とぼけんじゃねぇよ!!」
やおら鳥かごに手を突っ込み、オウムを引きずり出すプラリーン。つかんだオウムを口元に持ってくる。
プラリーン「(叫ぶ)おはよぉ〜ポリ〜!! ポ〜リ〜!!(カウンターにオウムを叩きつけながら)ポリ〜ちゃ〜ん起っきしましょ〜!!(ガンガンとオウムを叩きつける)ポ〜リ〜! お目目溶けちゃいまちゅよ〜!!」
オウムを放り投げるプラリーン。放物線を描き、どさっと落ちるオウム。ぴくりとも動かない
プラリーン「見ろよ。死んでるだろ?」
店主「・・・・・・いえいえ、気絶したんだ」
プラリーン「ぐだぐだぬかすな! このオウムはすでにお亡くなりなんだ。30分前、これを買うとき何て言った? 動かないのはしゃべり過ぎで疲れてるからだとか言ったな?」
店主「・・・・・ホームシックでフィヨルドが恋しいのかも」
プラリーン「フィヨルドぉ!? ざけんじゃないぞ! なら横になってひっくり返ってる理由はよ?!」
店主「この種類は横になって寝るんですよ。どうです、綺麗な鳥! それにこの美しい羽根!」
プラリーン「実はおかしいと思って調べさせてもらった。なんでオウムが止まり木にじっとしてたのかと思ったら、ただ単に釘で打ち付けてあっただけだったよ」
店主「・・・・・・そりゃそうですよ。そうでもしなきゃ、飛んで逃げちゃいますもん」
プラリーン「よく聞けよ。(床に落ちたオウムを拾い上げて)こんな鳥、4000ボルトの電気ショックくれても動きゃしないんだ。ご臨終なんだからな」
店主「い〜え、寝てるんですって・・・・」
プラリーン「い〜や、亡くなってるんだ。このオウムはすでにこの世のものじゃない。逝っちゃったの! みまかられたの! 息をひきとって、神の元に召されたの! こいつは『故オウム』! 亡骸! 釘付けしなかったら冷たい土の下で永遠の眠りについてなきゃいけないの! 成仏したの! 天国行ったの! こ、れ、は、『元』オウム!」
店主「・・・・分かりました、お取り替えしましょう」
プラリーン「(カメラに向かって)イギリスで何か買おうと思ったら、疲れ果ててまでも苦情の言いっ放しだ」
店主カウンター周りを探して
店主「あいにく、オウムは品切れでして・・・・・」
プラリーン「・・・・・・・だろうな。じゃあ代わりに何があるんだ?」
店主「ナメクジはいかがでしょう?」
プラリーン「・・・・・・喋るのかい?」
店主「いいえ」
プラリーン「喋んなきゃ代わりじゃないだろうよ!」
店主「じゃあ、こうしましょう。私の兄貴の店がボルトンにあります。(メモを渡す)そこならオウムの取り替えがきくと思います」
プラリーン「ボルトン?」
店主「ええ」
プラリーン「分かった」
プラリーンはオウムを手にして出ていく。

場面変わって、『ボルトンのよく似たペットショップ』と字幕がでる(上の写真)。店のドアには『よく似たペットショップ(有)』と看板が張ってある。店の様子も一緒なら店主の格好まで一緒! その店主は付け髭を張り付けている。そこへ、プラリーンが入ってきて、店主の顔をしげしげと見る。さらに床を見たプラリーンは、さっき置き忘れたはずの鳥かごを見つけて「ぎょっ」とする。
プラリーン「失礼。ここはボルトンかい?」
髭の店主「いいえ、イプスウィッチです」
プラリーン「(カメラに向かって)・・・・・・・イギリスの鉄道事情が、ここまで非道いとはな」
再び場面変わって、『駅苦情係』の立て札のあるカウンター。駅員が口笛を吹きながら立っている。そこへプラリーンがやってくる。その手にはまだオウムが握られている。
プラリーン「苦情を言いたい」
駅員「だめです」
プラリーン「・・・・・何で?!」
駅員「私は脳外科医で、ここにはバイトで立ってるだけだから」
プラリーン「・・・・・それとこれと何の関係があるんだ?」
駅員「(ぼそっと)引き延ばしは失敗か・・・・」
プラリーン「苦情なんだが、ボルトンに行くつもりが、イプスウィッチに着いたぞ」
駅員「いいえ、ここはボルトンですよ」
プラリーン「(はっとカメラを見て)あの店主め、嘘を言ったな!」
駅員「(カメラを見ながら)イギリスの鉄道はいつも正確です」
プラリーン「ボルトンなら問題ない。店に戻ろう」
場面は再び『よく似たペットショップ』。字幕には『(有)少し後』と出る。プラリーン入ってくる。店主はまたしてもこそこそしている。
プラリーン「今聞いたんだが、ここはボルトンだな」
髭の店主「・・・・・・そうです」
プラリーン「さっきイプスウィッチと言ったろ」
髭の店主「・・・・・・駄洒落でして」
プラリーン「・・・・・・・・どこが!?」
髭の店主「ああ・・・・いいえ!駄洒落じゃなくて、え〜と、ほら、上から読んでも下から読んでも同じやつですよ・・・・」
プラリーン「・・・・・・・・・回文?」
髭の店主「そう! それ!」
プラリーン「どこが回文なんだ!? ボルトン(BOLTON)の逆さまはノトロブ(NOTLOB)だろが! 全然違うぞ!!」
髭の店主「・・・・・・・それで、ご用は?」
プラリーン「いいや、結構! これ以上こんな馬鹿なスケッチにつき合うのは真っ平ご免だ!」
そこへ突然軍服の男が乱入してくる。
大佐「その通り! その通りだ! 馬鹿馬鹿しい! やってられるか! さっさと次に行くぞ!」
プラリーンと髭の店主は顔を見合わせて「あいつは何者?」的なやりとりをしている。大佐は強引にスケッチを終わらせてしまった・・・・・
END
| プラリーンと店主のやりとりは、冒頭でも述べたようにペイリンが出会った、信じられないような態度を取る中古車ディーラーが元になっている。 この『死んだオウム』スケッチは、パイソンの歴史そのものであり、このスケッチが無ければパイソンを語ることができない。それ故、『ベスト・オブ・モンティ・パイソン』という傑作集のサブタイトルには「Parrot sketch not included(オウムのスケッチは入っていません)」という名文が記されているほどだ。 このスケッチには「劇場版」「ライブ版」など色々なバージョンが存在し、とくに傑作なのは『シークレット・ポリスマンズ(VapよりDVDが発売されていたが、諸般の事情によりメーカー回収となってしまったらしい)』に収録されている最新バージョンで、苦情を言いに来たプラリーンに対し、店主はオウムの代金と交通費をあっさりと返却してしまい、プラリーンが「サッチャー政権もバカにならん」と締めくくるわずか数十秒のスケッチ。同作品集には、クリーズの鬼気迫る演技に思わず吹き出してしまうペイリンの微笑ましいシーンも収録されている。 ところで最後に登場するグレアム演じる大佐は、この後で紹介する『1969年 今どきの軍人』の大佐と同一人物である。 |
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