スケッチ その4
『ウイッゾ・チョコレート株式会社(Crunky Frog)』

第1シリーズ 6話より

出演
プラリーン警視・・・ジョン・クリーズ
パロット警視・・・グレアム・チャップマン
ミルトン(社長)・・・テリー・ジョーンズ


「不当表示」や「異物混入」など、日本の食事情もいろいろと危険が伴う現代ですが、パイソンズは30数年前に、すでに現代社会に警鐘を鳴らしていた・・・・というのは考えすぎですね(笑) ところで、このスケッチは食事時には見ない方がいいですよ。むろん、これを読むのも・・・・


森林をバックに、プラリーン警視が立っている。
プラリーン「やぁ、どうも。今はフィルムに写っている私ですが、数秒後にはスタジオに行くでしょう。では」
ぱっと消えるプラリーン。

場面変わって、スタジオセットの扉を開けて、プラリーンが顔を出す。
プラリーン「またお会いしましたね?
プラリーンが室内にはいると、そこはウィッゾ・チョコレートの社長室。プラリーンの後には、チョコレートの箱を手にした、もう一人の警官がいる。二人がさらに奥に進むと社長席があり、ミルトンがいる。
プラリーン「やぁ、あなたがここの社長のミルトンさん?」
ミルトン「いかにも」
プラリーン「パロット警視と私は、衛生部から来た。御社の製品の『高級ウイッゾ・チョコ詰め合わせ』についてお聞きしたい」



ミルトン「ええ」
プラリーンではさっそくお聞きしますが、(箱から一個取り出して)まず1番の『チェリーフォンデュ』。これは非常に汚らしいが不問にしておく」
ミルトン「そりゃ、どうも」
プラリーン「次は4番の『サクサク蛙』だが」
ミルトン「あぁ、はい」
プラリーン「中に本物の蛙が入ってるのか?」
ミルトン「ええ、わずかですが」
プラリーン「どんな種類の蛙が入ってるのですかな?」
ミルトン「死んだ蛙です」
プラリーン
(絶句)・・・・・調理済みの?」
ミルトン「いいえ」
パロット警視が、今にも吐きそうな様子。
プラリーン「生の蛙なのか?!」
ミルトン「若蛙のみですよ。イラクから空輸した若い蛙を、きれいな湧き水で丹念に洗い、それを締めて殺し、スイス製のミルクチョコレートで5層に刳るんで、その上から愛らしく砂糖を飾りにまぶした一品です」



プラリーン
「中身は蛙なんだろ!?」
ミルトン
(不機嫌そうに)勿論ですよ」
プラリーン「骨ぐらい出したら?」
ミルトン「そんなことしたら、あの食感が失われてしまうじゃないか!」
パロット警視は、もう限界が近い様子。
プラリーン
(パロット警視を指さして)パロット警視は、さっき一個食べてしまったぞ」
パロット「ちょっと、うっぷ・・・・失礼!!」
大急ぎで部家から出るパロット警視。
ミルトン「・・・何たって『サクサク蛙』なんですから!」
プラリーン「消費者はそうは思わんだろ、普通は! せいぜい、アーモンドとか、偽の蛙が入ってると思うだろ」
ミルトン
(憤慨して)偽物だって?! 冗談じゃない!! 当社は人工防腐剤や、一切の添加物も使用していないんだ!!」
プラリーン「だが、これでは不当表示だ! ちゃんと正確に『サクサク本物の死んだ骨付き蛙入り』と表示したまえ!」
ミルトン「それじゃ、売れ行きが落ちてしまうよ」
プラリーン「知らんよ、そんなこたぁ! こっちは消費者の味方だ! さて次だが・・・・」
パロット警視が戻ってくる。
プラリーン「5番だな?」
パロットが頷く。
プラリーン「5番は『羊の膀胱カップ』」
パロット「うぉっぷ!!」
パロット警視は再び部屋から飛び出していく。
プラリーン「これの中身は何だ?」
ミルトン「新鮮なコーンウォールの雄羊の膀胱を丹念に洗った後蒸しあげて、ホイップしたチョコレートで刳るんで、ゴマで味付けた後で、ヒバリのゲロで飾り付けるんです」
プラリーン
(唖然)ヒバリのゲロぉ!?」
ミルトン「そうです」
プラリーン「そんな物、どこに書いてあるんだ!」
ミルトン「箱の裏の成分表に、ほら『グルタミン酸ナトリウム』の横に」
プラリーン
(箱の裏を見て)こんなんじゃ、分からんだろう! もっと大きな赤いラベルで『ヒバリのゲロ』とはっきり書け!!」
ミルトン「そんな事したら、当社の売れ行きはがた落ちだよ」
プラリーン「もっと普通の菓子は作れんのか! プラリーヌ(ナッツのキャンディー)とかライム・クリームとかが一般的だろ? 何だこの『ゴキブリの群れ』って?」
パロット
(戻ってきた直後に『ゴキブリの群れ』と聞いて)うえぇぇっ!!(また部屋を飛び出す)
プラリーン「それと『炭素熱のさざ波』、この『驚きのバネ』って何だね?!」
ミルトン「あぁ、それこそ当社の自慢の一品でして、ビターチョコで刳るんであるんですが、口の中で溶けると、突然バネ仕掛けのボルトが飛び出して、両方の頬を内側から突くんです」
プラリーン「・・・・楽しいか? そんな事して! どこの世界に口の中血だらけにしながら菓子食って喜んでる奴がいるんだよ?! 全部不当表示だ! 署に連行する!!」
ミルトン
(カメラを見ながら)警官の鏡だね」
プラリーン「カメラに話しかけるんじゃない!!」
プラリーン警視がミルトンを連行して部屋を出ていくのと入れ違いに、パロット警視が戻ってくる。
パロット「もし一般大衆が菓子の表記にもっと注意してたら、我々役人の仕事もずいぶん楽になると思うんですが。少なくとも、便所に閉じこもってゲロ吐いてたりはしないでしょう。うっぷ」

プラリーン「BBCは次の案内の非常なまでの程度の低さに対して、謝罪いたします。全く申し訳ない」

パロット「それでは次のコント、『株屋の静かな1日』をご覧下さい。うえっぷ!」

END

モンティ・パイソンでは馴染みの深い『ウイッゾ・カンパニー』の登場です。この会社の作る製品は、ことごとく消費者をおちょくった商品ばかり。第1シーズン1話の『ウィッゾ・バター コマーシャル』では「ウィッゾのバターの味は、死んだ蟹肉と同じ」と来たもんで、まったく懲りない会社ですね。さて、ジョン・クリーズ演じるプラリーン警視ですが、先に紹介した『死んだオウム』に登場する彼とは別人の様子。ひょっとしてお兄さんとか(笑) このプラリーン、一般的には『プラリーヌ』と発音するのが正しいようで、その意味はクルミやアーモンドなどのナッツ類に、砂糖をコーティングしたお菓子の事で、日本ではあまりポピュラーなお菓子では無いようです(ちなみに調べると、「クルミの砂糖菓子」とはっきり断言していたり、「アーモンドをキャンディーコートした物」とか、「最近では砂糖をチョコレートに変えたものが一般的」とか様々なので、今回は「ナッツのキャンディー」としました。アーモンドを使ったプラリーヌの作り方はこちらで詳しく紹介しています)。今回 の意訳では人名とお菓子の名の区別を付けるために、人名を『プラリーン』、お菓子の方を『プラリーヌ』とさせていただいております。


もっとパイソン?


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